国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)を支持母体とする民族覚醒党のマーフッド副党首(前国防相)は十八日までに、じゃかるた新聞との会見に応じ、来年の総選挙と大統領選挙に向けた戦略を語った。メガワティ大統領の再選阻止に向けて、他党と協議していることを明らかにしながらも、闘争民主党との連合結成にも含みを持たせた。
マーフッド副党首は、来年の総選挙で、民族覚醒党の得票率は二三%程度(一九九九年は一二・六%)まで伸びると予測した。その根拠として、(1)党指導者の良し悪しで判断しない熱狂的な支持者がいる(2)アブドゥルラフマン前大統領というカリスマ性のある指導者がいる─などを挙げた。
民族覚醒党(一九九八年結党)の前身であり、ナフダトゥール・ウラマが結成したNU党の一九五五年と七一年の総選挙の得票率一八%は、現在も基礎票として計算できると強気。「前回の総選挙は、準備期間が短く、ジャワ島のNUの勢力地域にしか組織基盤を築けなかった」と語り、NUの伝統的な基礎票を考慮すれば、他地域への基盤拡大で得票率の上積みが可能であると主張した。
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マーフッド氏
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党の大統領候補については、アブドゥルラフマン前大統領の出方次第で流動的だが、前大統領を筆頭に、ハシム・ムザディNU議長、スシロ・バンバン・ユドヨノ政治・治安担当調整相、アルウィ・シハブ党首の名が上がっている。
■4つのシナリオ
また、総選挙の得票率次第で、(1)党独自に大統領の座を狙う(2)前大統領以外の三人から候補を立て副大統領の座を狙う(3)正副大統領以外の形で政権に参加する(4)野党に徹する─の四つのシナリオを描いているという。
メガワティ大統領の再選が有力視されているが、大統領率いる闘争民主党と連合を組むことも、超党派で連合を組み大統領の再選阻止に回ることもあり得ると主張。
「現時点では、指導力に欠けるメガワティ氏の再選阻止に傾いている。しかし、汚職撲滅を推進するというのであれば、闘争民主党に協力しても良い」と語った。
民族覚醒党を象徴する指導者であるアブドゥルラフマン前大統領にとって、メガワティ大統領は因縁の相手。かつては互いに「兄妹」と呼び合った仲だが、二〇〇一年七月に前大統領は弾劾され、当時副大統領だったメガワティ氏が大統領に昇格している。
■大統領夫が連合打診
先ごろ、メガワティ大統領の夫のタウフィック・キマス氏とシハブ党首が会談し注目を集めた。マーフッド氏によると、タウフィック氏は、闘争民主党、ゴルカル党、民族覚醒党の三大政党による連立政権構想を持ちかけてきた。
その際、三党のうちで最多得票政党が大統領、二番手が副大統領、三番手が国会議長の座を取る案を提示したという。「しかし、シハブ氏はその場で何の約束もしなかった。すべては、総選挙の結果が出てからだ」と語った。
■イスラム政党の思惑
一方で、メガワティ再選阻止の線でも他党との協議を進行中。大統領就任に野心的な国民信託党のアミン・ライス党首(国民協議会議長)は一時、再選阻止で主要イスラム政党が合意したと記者団に語ったこともある。
これについて、マーフッド氏は、イスラム政党間ではなく、マウラニ元国家情報調整庁長官が音頭を取ったインドネシア・イスラム学生協会(PII)の会合で「非公式にではあるが、二〇〇四年の任期切れを持って、合法的にメガワティ政権を終わらせることで一致した」と説明。
この会合には、アミン氏やマーフッド氏のほか、民族民主統一党のリアス・ラシッド党首(元地方自治担当国務相)、開発統一党のユヌス・ヨスフィア幹事長(元情報相)らも出席した。
具体策としては、(1)大統領選に統一候補を出す(2)第一回投票では各党が候補者を立てるが、いずれかの候補が決選投票に進んだ場合、他の党はこの候補を支持する─ことが検討されたという。
■「和解」への条件
国家の安定と難問の解決のためには、民族主義を代表する闘争民主党と穏健派イスラムを代表する民族覚醒党が連携するのが理想的との見方もあるが、「闘争民主党が、アブドゥルラフマン氏の弾劾問題にけじめをつけることと、清潔な政府運営を約束すること」が両党の関係正常化の大前提とした。