国内のテレビ販売が好調だ。年初からのルピア高で価格が低下しているのを主要因に、今月末に日韓で共同開催されるサッカーのワールドカップを目前に控え、テレビを新たに購入する人が急増している。二〇〇一年に三・三%を記録した経済成長のけん引役となった国内消費の増加に加え、経済再建が徐々に進展しつつあることが背景にあるが、需要増加はジャカルタより、地方で顕著に表れているようだ。
昨年の国内の市場シェアで業界三位のパナソニック・ブランドを生産、販売するナショナル・ゴーベル社のヘル・サントソ取締役によると、通貨危機直後と同様に、輸出関連の農林業に従事する地方の庶民の間での需要の伸びが目立つという。
同社によると、二〇〇一年のテレビの国内販売台数は全体で約二百万台。今年は一五%増の二百三十万台を見込んでいる。
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チャンネルも5角形のサッカーボール型テレビ
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ジャカルタポスト紙によると、四月までの販売台数は前年同期比二〇%増の九十万台を記録した。
ゴーベル社のウラン・ヌリンダ製品プランニング課長は「四年前と同様、ワールドカップ前には需要が伸びる傾向があるというのが大きな要因だ。ルピアが安定していることや、中国製品が流入していることから、価格競争が激しくなっていることも需要増を後押ししている」と分析している。
■ジャカルタは低調
地方での販売が好調な一方、ジャカルタでは大きな需要増加はみられていないようだ。
コタの電気街グロドックでテレビを中心とした電化製品の商売を始めて十五年になるジョンさん(五二)は「ワールドカップ効果なんて、まったく感じられない。今年初めの洪水以来、客足は遠のき、商売上がったりだ」と冷めた見方。
ルピアの上昇でテレビの販売価格は今年初めから平均で二〇%前後下がっているというが、一九九七年に始まった通貨危機前と比べ、まだまだ売り上げは本調子には遠いという。
ジョンさんは「リストラも至るところで続いているし、多くの消費者はテレビなんか購入している余裕もないはず」とこぼした。
コンピューターのiMacを思わせる球形のフォルムに、銀と黒で彩られたユニークな色合い。ワールドカップに向け、韓国系のLGエレクトロニクス・インドネシアが、このほど、発売した新型二十インチテレビ「サッカーボールTV」が人気を呼んでいる。
韓国メーカーのテレビは、知名度では、まだ日本ブランドに及ばないが、徐々にその地位を確立しつつある。
今回はワールドカップが日韓共同開催ということもあり、このユニークなサッカーボール型テレビをきっかけに攻勢をかけようと試みている。
LGインドネシアは、中国、インドに続く三番目のテレビ生産基地だが、世界のLG販売拠点で売り出されているサッカーボールTVはインドネシア製。
同社のソン・キーウン販売部長によると、ワールドカップを控え、韓国の本社が、サッカーボール型テレビの生産の話を持ちかけてきたのが最初だという。
インドネシアには熱狂的なサッカーファンも多く、国内市場での需要も見込めると判断し、生産に踏み切った。
「値段や機能だけでなく、われわれがデザインも重視していることを消費者にも分かってもらいたかった。創造性と革新性に満ちた製品です」とソン部長。
国内では、これまでに七千台が売れ、ワールドカップが終了する六月までに一万五千台の販売が目標だ。
昨年の国内市場シェアが約二〇%で、シャープに続き二番目だったLG社は、このサッカーボールTVでLGの知名度をさらに高め、今年はシェア二五%と業界トップを目指している。