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2002年12月20日 じゃかるた新聞掲載

「今年は日系10社が撤退」 労組幹部と投資家が会合
 JJCが危機的状況説明 米国、韓国代表も警告
 ソニーの撤退で外資逃避への危機感が高まる中、日米韓の投資家代表とインドネシアの労組幹部ら約五十人が十九日、ホテル・インターコンチネンタルで意見交換会を開き、ジャパンクラブ(JJC)の中川勉理事長(東京三菱銀行ジャカルタ支店長)と森田順二労働小委員会委員長(TIFICO社長)がメガワティ政権との政策対話の状況や、投資環境整備に関する日本の投資家の要求を突き付けた。国会労働法特別委員会のレクソ・アゲン・ヘルマン議員が呼びかけたもので、国家経済復興委員会のソフヤン・ワナンディ議長、インドネシア国際商工会のジェームス・キャッスル代表、インドネシア韓国商工会の宋昌根事務局長らも出席した。

 中川理事長は、国際競争力が問われる時代を迎え、インドネシアにとって投資環境の早急な整備は避けて通れない問題だと強調。
 裾野産業やインフラが未発達であることから、コストや納入時期の遅れが発生、労働コストも中国と同レベルだが、今後、最低賃金が上昇した場合、中国を上回ることになる。生産性は中国が六〇─一〇〇%上回っているため、総合的にみると、投資環境に大きな差が生じていると指摘した。
ホワイトボードに数字を書き、労組幹部に国際競争力強化を説く中川さん
ホワイトボードに数字を書き、労組幹部に国際競争力強化を説く中川さん
 日本のインドネシア向け投資額は、一九九六年には七十六億ドルだったのが、二〇〇二年には三億ドルまで落ち込み、来年もさらに減少するだろうとの見通しを示し、早急な投資環境整備を訴えた。
 中川理事長によると、今年に入りインドネシアからの撤退を決めた日系企業は、家電、繊維を中心にソニー、アイワなどを含め十社に上るという。
 また、日系中小企業ではコストの一〇%ほどが「袖の下」に消えているという実態を紹介。汚職問題に加え、密輸、税金、電力不足問題などが新規投資の障害になっているとして、真剣な対応を政府に求めていると説明した。
 森田委員長は、労働問題が最も重要な問題と位置付けた上で、違法ストや解雇の問題を早急に解決するために、審議中の労働関連二法案についてJJCが提言書を国会に送付したことを明らかにした。
 TIFICOは中国とタイにも工場を持っているが、両国と比べてもインドネシアの状況は悪化していると指摘した。
 二人の講義に先立ち、プレゼンテーションを行った韓国の宋事務局長は、二〇〇一年十月から二〇〇二年八月までに、繊維や玩具を中心に四十二社の韓国系製造企業が撤退したと明らかにした。
 インドネシアと中国、ベトナム、ミャンマーなどの労働環境を比較し、いかにインドネシアが競争力で劣っているかを解説。最低賃金はドルベースで、インドネシアが月当たり六十二ドル、中国が七十四ドル、ベトナムが四十ドル(外国人雇用の企業)と、いまのところ、中国より低い水準にとどまっているが、週五十時間労働で生産性を加味した場合、中国の八十一ドル、ベトナムの七十三ドルに対し、インドネシアは百十五ドルに跳ね上がるとの数字を紹介した。
 最近、訪問したベトナムでの体験を基に、メードの若い女性が、半年間お金を貯め、中古コンピューターを購入して勉強したり、タクシーの運転手の英語熱、ホテルの繁栄ぶりなどの事例を挙げ、ベトナム人の向上心、勤勉性が、はるかに高いと強調、インドネシアも見習うべきだと語った。
 キャッスル会長は、労働組合幹部に向け「ノー・インベストメント、ノー・ジョブ」と明快に語りかけ、国民すべての繁栄のために労働組合も努力すべきだと主張。雇用を確保する観点から、労働集約産業の維持発展に取り組み、労働法案を早急に成立させることが重要だと述べた。
 ソフヤン議長は「これだけの外資企業が撤退していることを初めて知り驚いている。インドネシアには、密輸や汚職、税金、労働問題など多くの障害が残っており、これ以上取り残されないよう改革をスピードアップしなければならない」と主張した。
 全インドネシア改革労働組合連合のムハマッド・ロジャ事務局長は「減税や石油燃料、電力、通信など事業コストの削減が急務だ。政府は二─三年の間、この問題に注力して、これ以上投資家が撤退しないようにすべきだ」と述べた。
 一方で「現在の中国やベトナムの状況は、インドネシアが一九七〇年代に経験してきたこと。外国の投資家は、インドネシアの状況も考えてほしい」と述べた。ほかの労組団体参加者からも「経営者側は透明性を高めるべきだ」などの声が上がった。
 経済のグローバル化が急速に進み、インドネシア企業の国際化は避けて通れないとの声が実業界から強まる一方で、労働側は、インドネシアの発展段階や特有の社会事情を考慮すべきだとの意識が強い。実業界と労働界の間に横たわるギャップが浮き彫りになった会合だった。


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2002年11月29日 じゃかるた新聞掲載

ソニー工場閉鎖で波紋 大統領交え閣議で議論
 副大統領「存続を望む」 労働・税金通関が問題
 世界のソニーがインドネシアの生産拠点を閉鎖し、撤退を決めたことが、政府や企業の間で大きな波紋を呼んでいる。中国の台頭に加え、東南アジア諸国連合(ASEAN)自由貿易地域(AFTA)の域内関税撤廃など、アジアの製造業の生存競争が激化する中、ジャパンクラブは、インドネシア政府と投資環境の改善に向けた協議を続けてきた。経済回復の柱となる投資促進など、政府の一層の努力を求める声が出ているが、投資関連、労働関連法案の国会承認はずるずると延期され、抜本的な対策は講じられていない。インドネシアのメディアもインドネシアの投資環境への疑問を大々的に報じ、外国資本を誘致するための環境整備を急ぐよう求める声が一斉に出ている。
 ハムザ・ハズ副大統領は二十七日、ソニー・エレクトロニクス・インドネシア社が来年三月までに音響機器の工場を閉鎖、製造部門を撤退する計画が明らかになったことについて「本社の決定であれば、それを覆すのは困難だが、操業を続けることを望んでいる」と述べ、投資関連の大臣は、現在の外資の操業状況について早急に調査を行うべきだとの見解を示した。
 二十八日に行われたメガワティ大統領主宰の閣議でも、ソニーの工場閉鎖問題が議題に上がった。経済閣僚から「早急に原因を調査すべき」(ヤコブ・ヌワウェア労働移住相)、「治安問題より、労働、税金、通関問題を懸念する声が強い」(リニ・スワンディ産業貿易相)などの声が上がり、世界のトップ企業であるソニーの生産撤退は、政府内でも深刻に受け止められている。

■投資環境が不十分

 一方で、インドネシア商工会議所(KADIN)のアブリザル・バクリー会頭は、「政府は投資環境改善に向け、真剣に取り組んでいる」としながらも、「ソニーの決定は、投資環境問題が解決していない証拠だ」と述べ、政府に一層の努力を求めた。
 これまでにも、アイワなどの日系電機メーカー、ジョンソン&ジョンソン、韓国系製靴のドソン社などがインドネシアから撤退しており、早急に投資環境の改善が実現しなければ、撤退企業の数はさらに増加するとの懸念が上がっている。

■下請け企業もピンチ

 家電業界筋は、ソニーの生産撤退について「労使紛争で、随分もめていたことから、撤退のうわさは流れていた。日系の中小企業も含めた下請け企業はかなりの数に上る。今後、その補償に向けた処理が難航する可能性がある」と述べ、影響は大きいと指摘した。
 二十八日付コンパス紙は社説で、「国内重債務者の法的問題について、知識人が自分の分析や知識をひけらかしている合間に、庶民の仕事はどんどん失われている」と指摘。
 他の主要紙も「税金、労働、密輸、不確実な法の順守など問題は山積み。外資を撤退させてしまう要因が、現在の法律や規則の中にも残っている」(メディア・インドネシア紙)、「投資環境を整備せよ」(ビスニス・インドネシア紙)などと論陣を張り、外資誘致政策を中途半端にしている政府を厳しく批判している。




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