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2002年3月23日 じゃかるた新聞掲載

マルク報告(5)最後の楽園
小松邦康
(旅行作家)
昼も夜も活気ある生活 美しい海に優しい人々
 衝突が起きているのは境界線周辺だけだ。だから、そこを離れれば危険はない。非常事態宣言がうそのようだ。昼も夜も活気ある市民生活が繰り広げられている。
 職を失った人たちは道路や市場で店を開き、生活の糧を得ている。働かなくても食っていけることは難しくなったが、それでもあくせく働く必要はない。物価は上がったままだが物資は豊富にある。
楽園のような海で遊ぶ子供たち
楽園のような海で遊ぶ子供たち

■熱帯魚と泳ぐ

 アンボンから車で十五分、アマフスには古き良きアンボンが残っている。音楽が流れ、笑い声が絶えない。今日は男たちみんなが大工になり、わいわいやりながら家を建てている。一仕事終えると目の前の海に飛び込む。気持ち良さそうだ。
 私も飛び込み、シュノーケリングをした。色鮮やかなサンゴや熱帯魚と泳ぐ。海に浮かんでいるだけですべてを忘れ、いやされる。毎日ここで遊べる子どもと大人がうらやましい。

■魚連れのクジラ

 朝、アンボン湾にクジラが入ってくる。クジラはたくさんの魚を連れてくるので漁師たちは喜ぶ。夕方、クジラは湾の外へ帰って行く。ジャカルタの生活環境とは対極にある。インドネシアの最後の楽園の風景がある。

廃墟となったビル
廃墟となったビル

■非政府組織が活動

 アマフスにオランダ人女性が音楽の練習に来た。医療関係のNGOで働き、薬を避難民に配っている。
 アンボンに来たのは紛争が長引き困っている人がたくさんいるから。でも仕事を離れると美しい自然と優しい人に出会えるアンボンが好き。アマフスには都会とは違う、ゆとりある暮らしがある。ティパ(太鼓)をたたくと楽しくなるという。
 治安が回復したアンボンでは今、欧米人のNGO活動家や国連関係者が目立つ。車に旗を立て両派の間を走り回っている。援助のために来ている外国人を攻撃・妨害する者はいない。しかし今アンボンに日本人は一人もいないという。

■歓迎される日本人

 マルク紛争をまったく報じなくなった日本のマスメディアや外務省が出している危険度4が影響しているのかもしれないが、残念なことだ。
 日本人はキリスト教徒からもイスラム教徒からも受け入れられる。
廃墟のビルで、家を失った家族たちが暮らす
廃墟のビルで、家を失った家族たちが暮らす
 和解のパレードが中止になった二日後、私はイスラム教地区を歩いた。衝突があったアルファタモスク周辺でも、「日本人か」と声をかけられ、「そうです」と答えると、ほほ笑みが返ってくる。
 「写真を撮ってほしい」という。撮ってあげると、とてもうれしそうだった。
 家を失った家族が廃墟になったビルで暮らしていた。四階からの眺めがいいというので上った。抗争が激しかったころ、ここからスナイパーが射撃をしていた。海や山の景色、アンボンの町並みがよく見えた。眼下の焼け跡には民家が建ち始めている。
 写真を撮ったあとお茶をごちそうになった。またアンボンの人の優しさにふれた。

(おわり)



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