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2002年3月22日 じゃかるた新聞掲載

マルク報告(4)平和の破壊者
小松邦康
(旅行作家)
高校生の挑発で混乱 暴力を放置する警察
 州庁舎での和解の行事の後、キリスト教徒とイスラム教徒が同じトラックに乗り、町を回り始めた。多くの人たちがその後を追い、町を練り歩くパレードが始まった。パレードは州政府が計画し、前日のテレビやラジオなどでも伝えられ、お祭り好きの住民は心待ちにしていた。

■和平行進に投石

 しかし和平を妨害し紛争を長引かせたい勢力にとっては、パレードをつぶせば住民の期待を一転して失望に変えることの出来る格好のチャンスでもあった。
キリスト教徒とイスラム教徒が同乗して、パレードが始まった
キリスト教徒とイスラム教徒が同乗して、パレードが始まった
 パレードはキリスト教地区からイスラム教地区に入り、最大のモスク、アルファタにさしかかった。モスク内では信者が昼の礼拝をしていた。
 礼拝せずモスクの外にいた高校生たちが、トラックやオートバイに投石を始め、四台のオートバイに火を付けた。パレード参加者を刃物で刺した者もいた。近くには警備中の警官や国軍の兵士がたくさんいたが、何もしなかった。

■再びパニック

 一部の住民から「やめろ」と声が上がった。「もう合意を忘れたのか。まだ争いをしたいのか」と大声で叫ぶ者もいた。「走るな! 興奮するな」と高校生たちをたしなめる者もいた。
 治安部隊が増強されると、やじ馬も群集もあっという間に膨れ上がった。
 警官は車を通行止めにした。治安部隊は空砲で威嚇した。これが群集の興奮を高め、闘争精神をよみがえらせた。周辺はパニック状態になった。
 イスラム教地区のアンボンプラザに買い物に来ていた六十人ほどのキリスト教徒が、怖くて外に出られなくなった。友人を訪ねて来ていたキリスト教徒も帰れなくなった。

■外国人にも乱暴

 パレードを見にアルファタモスクに来て、高校生の写真を撮っていた外国人は「なぜ写真を撮ったんだ」と高校生に叫ばれ、群集に囲まれた。
衝突があったアンボンの歴史あるアルファタ・モスク
衝突があったアンボンの歴史あるアルファタ・モスク
 カメラを奪われ、メガネを踏みつけられた。現場には警官や国軍兵士がいたのに見て見ぬ振り。カメラを奪って逃げた男を逃がし、逆に外国人を連行し、警察で取り調べた。
 外国人は、スナルコ州警本部長に面会を求め「警察さえしっかりしていれば、今日の騒ぎは抑えられたし、和平の機運も冷めなかった」と訴えた。
 「銃声がパニック状態を生んだ。あのときに発砲などをせず、みんなが好きなアンボンの音楽を流し、あなたがさっき州庁舎前で踊ったように、事件現場で高校生も群集も警官もみんなで歌って踊り、アンボンの人たちに染みついている、乗りの良さを利用し、盛り上げれば、バカらしい争いなどやめるはずだ」と訴えた。

■勇気ない警官

 「カメラを奪って逃げた男は高校生たちと違い、動作が素早くプロの技を感じさせた。高校生たちを扇動し、オートバイに放火し、パレードをつぶし、和平を妨害する一派だ。なぜ逃がしてしまったんだ。警官一人一人に勇気がないから、何千人もの人が殺され、紛争が長引き、住民の不安はなくならないんだ」とも訴えた。
 本部長にとっては、一月半ばに就任して以来、初めての衝突だった。せっかくいい雰囲気が出来たのに、ああ何てことだ。本部長も多くの住民同様失望した。肩を落とし、しばらく黙ったままだった。

■失望する住民

 夜の地元テレビのニュースで事件が詳しく報道された。州知事は和平を妨害する少数の扇動者のせいだと言った。そんなことはわかっている。知事としてどうするのか、リーダーシップがないから、紛争が終わらないんだ。
 国軍司令官は、やはり和解は難しいと言った。ああ何というざまだ。
 私がホテルに戻ると、従業員はパレードが中止になりとても残念だ、また争いが再開したとこぼした。泣いていた従業員もいたという。




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