日本政府によるジャワ島北幹線の鉄道複線化支援として建設されていた西ジャワ州チカンペックとハウグリスの間の一部区間がこのほど完成し、四日、国鉄(KAI)チカンペック駅で開通式が行われた。開通した同区間は、ジャワ島の大動脈である北幹線の一部。インドネシア政府は、ジャカルタ−ジョクジャカルタ−スラバヤ間を将来的に複線化し、人や物資の大量輸送、鉄道運行の安全性の向上を実現させたい考えだ。
開通式には、インドネシア側からメガワティ大統領、夫のタウフィック・キマス氏、アグム・グムラール運輸相、リニ・スワンディ産業貿易相、イスカンダル・アブバカール運輸省陸運総局長ら、日本側から飯村豊・駐インドネシア大使、国際協力銀行(JBIC)ジャカルタ事務所の佐藤活朗主席駐在員らが出席。大統領や閣僚、大使らはジャカルタから特別列車で会場入りした。
|
担当者から説明を受けるメガワティ大統領(中央)と飯村大使(左から2人目)、タウフィック・キマス氏(右から2人目)、リニ産業貿易相(同3人目)
|
メガワティ大統領はスピーチで「鉄道、航空、船などの輸送交通は、国家にとって重要かつ優先すべき問題。独力なら十八年かかるところを、日本の援助のおかげで二年で終えることができた」と謝意を表明。運輸関係者に対し、交通インフラの整備や維持管理の重要性を訴えた。
飯村大使はインドネシア語で「日本は厳しい財政状況の中、インドネシアの経済発展のために数多くの援助を行っているが、投資環境の改善という観点から、鉄道、道路、港湾などの経済インフラ整備は極めて重要だ」とあいさつした。
式典の後、メガワティ大統領と飯村大使らは、運輸省の担当者の案内で、工事の様子を展示した写真パネルや建設作業に使った道具などを見学。メガワティ大統領は作業用ゴーグルをかけてみせるなど、上機嫌だった。
■10カ月前倒しで完成へ
ジャワ北幹線鉄道の複線化事業は、ジャワ島の幹線鉄道の需要増に対応するため、一九九四年に総額七十二億三千四百万円の円借款が供与されたが、九七年の経済危機の影響で工事契約が遅れ、二〇〇一年十一月に着工された。
今回、開通したのは、チカンペック−ハウグリスの全八区間(五十四キロ)のうち、チカンペック−チカウンの五区間(三十二キロ)。当初、工期は全行程で四十カ月の予定だったが、二十四カ月で五区間が開通。残りの三区間も来年五月に完成する予定で、大幅に前倒しされた。
また、同事業の二期目として、カドカンガブス−チルボン間(六十三キロ)にも、九八年に八十七億四千八百万円の円借款が供与されており、現在、施行業者の選定中。全区間が完工すれば、ジャカルタ−チルボン間が全線複線化され、ジャワ北幹線の輸送力が大幅に改善されることになる。
|
ジャワ島の幹線鉄道で進められている複線化
|
■日本軍政がレール幅統一
インドネシアで鉄道が開通したのは、日本より四年早い一八六八年。スマラン−ソロ間の一部区間のクミジャン−タングン(二十六キロ)が初の開業区間だった。以降、オランダの東インド会社(VOC)がジャワ各地に複数のゲージ(レール)幅の鉄道を敷設した。
その後、日本は占領時代に、統一されていなかったゲージ幅を日本と同じ狭軌(一〇六七ミリ)に統一、列車の乗り入れが飛躍的に改善された。
戦後の日本政府による鉄道支援は、六〇年代のチカンペック−チルボン間の修復工事が最初。八〇年代には、ジャボタベックの複線化、電化、高架化など鉄道の近代化工事が、日本の支援を中心に行われた。
■ジョクジャへ複線化急ぐ
現在、インドネシアの鉄道は、ジャボタベックでほぼ複線化・電化されている。西ジャワ州バンドンまでは世銀の援助で複線化工事が進み、完成間近だ。
インドネシア政府は、大量輸送の実現や安全性の向上を目的に、ジャワ島の大動脈であるジャカルタ−チルボン−クロヤ−ジョクジャカルタ−ソロ−スラバヤ間の複線化を目指している。単線部分のチカンペック−チルボン、クロヤ−ジョクジャカルタは日本が支援し、チルボン−クロヤ間は中国が支援に前向きな姿勢をみせている。
ジャワ島南幹線のクロヤ−ジョクジャカルタ間については、九六年に約六十億円の円借款の供与が決定したが、同区間の第二期事業が今年の円借款候補案件(ロングリスト)に上がっている。