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2003年2月25日 じゃかるた新聞掲載

目抜き通りに外交要塞 日本大使館新庁舎が完成
 テロ対策に二重ゲート 来月4日から業務開始

 ジャカルタの目抜き通り、タムリン通りに建設中だった在インドネシア日本大使館の新しい建物がこのほど完成し、二十四日、日本の報道陣に館内が初公開された。八階建てのグレーの建物は、世界的なテロ事件や大使館駆け込みなどの国際情勢の変化を反映し、当初言われていた「モダンな建物」というより、自動車爆弾などテロ対策を重視した「外交官の要塞」というイメージで再登場した。ムナラタムリンの臨時大使館から新館への三年ぶりの引っ越しを、二十八日夜から三月二日まで突貫で行い、四日からビザ発給などの領事業務も含め業務を開始する。

高い塀と有刺鉄線は厳しい国際情勢の反映
高い塀と有刺鉄線は厳しい国際情勢の反映
天井が高く、清潔ムードの領事業務窓口
天井が高く、清潔ムードの領事業務窓口
 情報文化班長の浜田雄二・一等書記官、鈴木哲参事官の案内で、NHKの田端祐一支局長ら七社の記者団が取材した。
 最初に目を引いたのは、車が二重ゲートに挟まれた瞬間。電動式の鉄扉が開き、車が中に入ると、その扉が閉じ、次の扉が開くまでに、不審者であるかどうかのチェックがある。
 扉が開いた瞬間、突入してくる自動車爆弾テロに備えた新装置だ。「これ、世界の日本大使館のスタンダードになっています」と鈴木さん。
 菊の御紋も真新しい正面の建物の中へ入ると、素っ気ない待合い室。訪問者は、受付で手続きを踏み、鉄のドアを何回も開けて館内に入るのはこれまで通り。
 裏手に小さな日本庭園が復活。旧館当時、ジャパンクラブが寄付した灯籠が飾られた。
 領事館への一般客は、玄関左手の別のゲートを入る。ビザやパスポートを発給する領事業務の窓口は一階にあり、大理石を敷き詰めるなどして清潔さを出した。 
 ここから階段を上がった二階部分は、浜田さん自慢の情報文化センター。二千冊の図書室と、椅子なら百四十席、パーティーなら二百人を収容できる多目的ホール。「最新式のスクリーン、音響装置が完備しているので、セミナーなどに利用したい」と浜田さん。
 三階は大使館の会計など官房フロアー、四階は財務省など各省庁出向の経済担当書記官らの執務エリア、五階に飯村大使と佐藤公使のトップが陣取り、六階はインドネシア情勢を日々分析する政務班の詰め所。
 このように一階から六階までが、大使館業務の執務スペースだが、外から見ると建物は八階建てに見える。ジャカルタ特別州の建築指導で目抜き通りの建物は、最低で八階建てを義務付けられていた。
 この条件を満たすため、七階から八階にかけての吹き抜けの空間に、邦人緊急避難所を設けた。八百人の邦人を収容できるスペースだが、冷房なし。天井は、屋根代わりに付け足した屋上ヘリポート。
 鈴木さんによると、サイゴン陥落のような事態でもあれば、最後に残った邦人が、この避難所からヘリに乗り、ジャワ海に待機する自衛艦に脱出−という構想で造られた。
 「避難所を使うことはめったにない。通常はローカルスタッフにテニスやバドミントンを楽しんでもらいます。宿直者用にシャワー室はありますが、サウナなんてとんでもない」と鈴木さん。
 テロリストの侵入に備えた隠しカメラなどの秘密兵器、日本外交の秘密を守る通信施設などへのアクセスは認められなかったが、大使の部屋は防弾ガラス、厚さ十数センチの化粧版鉄扉が設置された。「ここが最後の砦になります。脱出口?それはご想像にまかせます」と鈴木さん。

■駐車場が悩み

 大使館が最も頭を痛めているのは駐車場問題。来客用駐車場が少ないことや安全対策の面から、大使館への訪問客は、アポイントする際、事前に車のナンバーを通告する必要がある。
 また、パスポートなど領事窓口への一般客の駐車場は、原則として用意されていない。門の前で車を降り、運転手に最寄りのホテルやデパートの駐車場で待機させ、携帯電話で呼び出すなどの方法を大使館は提案している。
 新しい大使館は総工費約三千万ドル(約三十六億円)。一九六六年に建てた旧館を取り壊した後、大成建設が二〇〇一年二月から約二年をかけて完成。引っ越しには、日本通運の特別部隊が組織されている。



2002年3月3日 じゃかるた新聞掲載

大使館は引っ越し中 パトカー先導で輸送
 4日から通常業務へ

 タムリン通り二四番地の旧大使館跡に完成した新しい在インドネシア日本大使館への引っ越し作業が、二十八日夜から始まった。三日夜までにすべての荷物の移動を終え、四日朝から旅券やビザの発行など領事業務を、通常通り再開する予定だ。
連休を利用して引っ越し作業が続く
連休を利用して引っ越し作業が続く
 臨時大使館が三年間、仮住まいしていたムナラ・タムリンの六階から九階までの部屋からの荷物の運び出しは、日曜日の二日、ピークに達した。引っ越しを請け負った日本通運が、二トンから四トンのトラック八台とスタッフ約七十人を総動員し、二交代で二十四時間体制の引っ越し作業を行っている。
 梱包された事務机、ソファー、パソコンなど機器類は、慎重にトラックに積み込まれ、荷物を満載したトラックはタムリン通りをパトカー先導で移動、新館との間を往復した。
 引っ越しに備え、不必要な書類を処分するよう職員に通達が出たが、保存期間が決められた大量の外交文書は減らすことが難しく、段ボールに詰めた文書だけでも数百個に上った。
 ビザ発券機や通信機器、医療機器など高価で精密な機器も多く、不慮の事故に巻き込まれないようポロシャツ姿の日本人職員が休日返上で監視した。
 現場を指揮する日通の米田寛部長は「こんな大規模な引っ越しは、ジャカルタではめったにない。引っ越し先が新築なので、建物を傷つけないよう慎重に作業している。四日から再開する業務に支障をきたさないよう、急ピッチで作業を進めている」と語った。



2002年3月5日 じゃかるた新聞掲載

大使館業務を再開 3年ぶりの新築庁舎で
 駐車に戸惑う訪問者

 ジャカルタ・タムリン通りの一等地に完成した在インドネシア日本大使館が三日間の引っ越し作業を終え、四日朝から、新館での業務を開始した。
新庁舎で訪問者をチェックする警備員
新庁舎で訪問者をチェックする警備員
 この日は断続的に雨が降り続いたが、開館の午前八時半前には、幅約十メートルの広い歩道に十数人の来館者が列を作った。
 一階の領事窓口では、正午を過ぎても、五十人以上の申請処理が間に合わなかったが、職員は昼休みを一部返上して対応に当たり、混乱はなかった。
 総領事館によると、先週の二十七、二十八日の領事業務を停止したため、この日は通常よりも多い、インドネシア人約百二十組、邦人約三十五組が、査証申請などの手続きに訪れた。
 大使館前には常時二人ほどの警備員が配備され、来館者の車を誘導したり、帰宅する訪問客のために流しのタクシーを呼び止めたりしていた。 
 自家用車で来館した邦人が、車での入館を断られたり、近くのモールに運転手を待たせたため、帰宅の際に歩道でしばらく待つ人もいた。邦人訪問者からは「駐車場がなくて不便」「こういうご時世なのでしょうがない」といった声が聞かれた。
 また、自家用車で訪れた邦人客が、車を大使館隣の空き地の前の歩道に駐車するため、十台近い車が歩道を占拠。歩行者が水たまりのある車道を歩く姿も見られた。
 大使館への訪問者は、アポイントの際に、車のナンバーを通告すれば館内に駐車できるが、その数も約十台に限られている。インドネシア人ら外国人が九割以上を占める、領事窓口への一般客の駐車スペースは用意されていない。
 駐車場不足に関しては、インターネットの掲示板などでも批判的に取り上げられ、話題になっている。
 大使館は「敷地面積の関係で駐車場の数が少ないのは、以前と変わりません。迎えに来てもらう時間を指定したり、何らかの方法で呼び出すなど、工夫してほしい」と理解を求めている。




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