米国の対イラク戦争への準備が大詰めの段階を迎え、世界的にも反戦デモが広がっているが、九日、一昨年のアフガン攻略にも反発した、イスラム本流を歩む正義党が反米デモを組織し、国営アンタラ通信によると支持者ら約五万人を動員、イラク戦争に反対するデモとしては、最大規模の抗議行動を行った。
デモ隊は、インドネシア国旗や党旗、「戦争を止めろ」「イラクを救え」「米国はシオニスト」などと書かれた横断幕を掲げ、中央ジャカルタのホテル・インドネシア前ロータリーから行進を開始。タムリン通りの国連前でシュプレヒコールを上げた後、米国大使館前に移動した。
正義党のヒダヤット・ヌルワヒド党首は、米政府のイラク戦略を非難。さらには、米政府が米国に滞在するインドネシア人に外国人登録を義務付けた問題や、マレーシアの出稼ぎ労働者問題などに対するこれまでのインドネシアの外交政策は「遅くて手ぬるい」として、メガワティ政権にも矛先を向けた。
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「石油を狙う戦争やめろ」などと叫ぶ正義党の反米デモ(アンタラ通信提供)
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正義党は二〇〇一年のアフガン攻撃の際も二万人の支持者を動員して米非難デモを展開、国会議席の多数を占める対米柔軟派のイスラム政党とは一線を画す運動を起こしている。
米イラク攻撃が実現に近づくにつれ、国内での反米感情が高まることが予想されており、国内第二のイスラム団体ムハマディアのシャフィイ・マアリフ議長は「デモはオーケーだが、外国人排斥運動のような、治安を乱すような事態は何としても避けなければならない」と警戒感を示した。
■船舶輸送に影響
政情不安が高まることや世界的な景気減退で、輸出への影響や通貨の変動などインドネシア経済にも大きな影響が出ることも懸念されている。
インドネシア製靴業者協会のジマント事務局長は、イラク攻撃に向けた調整のため、すでに海外からの注文は減少し始めていると指摘。「イラク攻撃が始まれば、スエズ運河を通行する船舶による輸送に影響が出るため、欧州、アフリカ、中東地域の需要はさらに減少するだろう」と述べた。
■英米大使が国会説明
リチャード・ゴズニー英大使とラルフ・ボイス米大使は七日、国会第一委員会(国防・外交)に出席し、国連を舞台に、大詰めの駆け引きが続く英国と米国の対イラク戦争への取り組み状況などを説明した。
ボイス大使は会談の後、「メガワティ大統領は公にも私的にも、今回の問題解決のために武力を行使することに反対しているのは非常に明確だ」と述べ、インドネシアの姿勢を尊重する意向を示した。