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2003年2月10日 じゃかるた新聞掲載

米イラク戦略に抗議 経済への影響を懸念
 正義党が5万人を動員

 米国の対イラク戦争への準備が大詰めの段階を迎え、世界的にも反戦デモが広がっているが、九日、一昨年のアフガン攻略にも反発した、イスラム本流を歩む正義党が反米デモを組織し、国営アンタラ通信によると支持者ら約五万人を動員、イラク戦争に反対するデモとしては、最大規模の抗議行動を行った。

 デモ隊は、インドネシア国旗や党旗、「戦争を止めろ」「イラクを救え」「米国はシオニスト」などと書かれた横断幕を掲げ、中央ジャカルタのホテル・インドネシア前ロータリーから行進を開始。タムリン通りの国連前でシュプレヒコールを上げた後、米国大使館前に移動した。
 正義党のヒダヤット・ヌルワヒド党首は、米政府のイラク戦略を非難。さらには、米政府が米国に滞在するインドネシア人に外国人登録を義務付けた問題や、マレーシアの出稼ぎ労働者問題などに対するこれまでのインドネシアの外交政策は「遅くて手ぬるい」として、メガワティ政権にも矛先を向けた。
「石油を狙う戦争やめろ」などと叫ぶ正義党の反米デモ(アンタラ通信提供)
「石油を狙う戦争やめろ」などと叫ぶ正義党の反米デモ(アンタラ通信提供)
 正義党は二〇〇一年のアフガン攻撃の際も二万人の支持者を動員して米非難デモを展開、国会議席の多数を占める対米柔軟派のイスラム政党とは一線を画す運動を起こしている。
 米イラク攻撃が実現に近づくにつれ、国内での反米感情が高まることが予想されており、国内第二のイスラム団体ムハマディアのシャフィイ・マアリフ議長は「デモはオーケーだが、外国人排斥運動のような、治安を乱すような事態は何としても避けなければならない」と警戒感を示した。

■船舶輸送に影響

 政情不安が高まることや世界的な景気減退で、輸出への影響や通貨の変動などインドネシア経済にも大きな影響が出ることも懸念されている。
 インドネシア製靴業者協会のジマント事務局長は、イラク攻撃に向けた調整のため、すでに海外からの注文は減少し始めていると指摘。「イラク攻撃が始まれば、スエズ運河を通行する船舶による輸送に影響が出るため、欧州、アフリカ、中東地域の需要はさらに減少するだろう」と述べた。

■英米大使が国会説明

 リチャード・ゴズニー英大使とラルフ・ボイス米大使は七日、国会第一委員会(国防・外交)に出席し、国連を舞台に、大詰めの駆け引きが続く英国と米国の対イラク戦争への取り組み状況などを説明した。
 ボイス大使は会談の後、「メガワティ大統領は公にも私的にも、今回の問題解決のために武力を行使することに反対しているのは非常に明確だ」と述べ、インドネシアの姿勢を尊重する意向を示した。



2002年1月30日 じゃかるた新聞掲載

政府、対イラク戦略を批判 米政府に自制求める
 北朝鮮に大統領顧問派遣

 緊迫するイラク情勢についてメガワティ大統領は二十九日、アクバル・タンジュン国会議長ら国会幹部を大統領官邸に招いて会談し、インドネシア外交の基本姿勢について意見を交換した。会談の後、予想される米国の対イラク攻撃について「国連は、イラクの大量破壊兵器開発疑惑に関する最終的な決断をまだ下していない。米政府は自制し、平和的に解決してほしい」とインドネシア政府の見解を発表した。

 ハッサン・ウィラユダ外相が記者会見で声明の内容を明らかにしたもので、「第二の湾岸戦争はイラクだけでなく、インドネシアを含む全世界にとって危険であり、回避すべきだ。インドネシア政府はこの見解を何度も米政府に伝えてきた」と述べ、世界一のイスラム教徒人口を抱える国家として、米国の対イラク攻撃計画を批判する姿勢を打ち出した。
米国の政策を批判するデモ隊
米国の政策を批判するデモ隊(1月23日)
 一方、北朝鮮の核開発問題に絡み、メガワティ大統領は同日、ナナ・ストレスノ大統領外交顧問を北朝鮮に派遣すると発表した。
 ナナ氏は「核問題の解決を支援するため、すぐにピョンヤンへ向かうよう命じられた。米朝協議再開の障害となっている問題について、平和的な解決策を支持する意向を伝える」と述べた。
 メガワティ大統領は昨年三月、北朝鮮を訪問し金正日総書記に南北対話を呼びかけた。同年七月には、北朝鮮のナンバー2である金永南・最高人民会議常任委員長がインドネシアへ返礼訪問している。
 一方、アミン・ライス国民協議会議長も同日、「ブッシュ米大統領はイラク攻撃計画を中止すべきだ。米国の攻撃理由は、大量破壊兵器の所持などではなく、政治・経済的な理由によるものだ」と非難した。
 アミン議長は、米国の本来の目的は三つあると指摘。イラク油田の確保、中近東諸国への権限拡大、領土拡大を含むイスラエルの保護政策を挙げた。
 また、イスラム政党の月星党は、記者会見で「政府はイスラム諸国との連帯を強め、米国のイラク侵略計画を非難するべきだ」との声明を発表。
 アフマッド・スマルゴノ同党幹部は「対イラク攻撃に反対しているのは、イスラムの国々だけではない。国連は、国連査察団による大量破壊兵器の査察を継続し、イラクもこれに協力すべきだ」と語った。




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