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2003年3月14日 じゃかるた新聞掲載

イスラム擁護戦線復活 「道徳監視」に照準
 歓楽街襲撃を再開か

 ジャカルタの歓楽街を襲撃する暴力集団として恐れられていたイスラム擁護戦線(FPI)のハビブ・リジック・シハッブ代表は、このほど、組織を立て直し、五カ月ぶりに活動を再開すると明らかにした。昨年十月十二日のバリ爆弾テロ事件の直後、治安当局の圧力で活動を一時停止していたが、新隊員をリクルートし、イスラムに反する道徳的退廃を社会から一掃する路線を強化、歓楽街の襲撃を再開すると示唆した。

 シハッブ代表は「過去四年間の活動を振り返り、指導部の強化と組織の引き締めを行った。これまで軍やビジネス関係者が介入したことが弱点だった。バリ事件の後、実動部隊を一時凍結したが、優れた隊員を募集し、組織を立て直した。(米国のイラク攻撃など)国際情勢とは関係ない」と語った。
 同代表は(1)隊員が恐喝を働くなどヤクザ集団化していた点も反省し、隊員の資格を厳しくし、訓練を強化し、本来のモラル回復運動に戻る(2)しかし、売春、麻薬、賭博の温床となる歓楽街を攻撃するこれまでの路線は変えない−などと述べ、歓楽街の監視を強化するとしている。
イスラム過激派指導者バアシル氏の逮捕に抗議して演説するハビブ・リジック・シハッブFPI代表
イスラム過激派指導者バアシル氏の逮捕に抗議して演説するハビブ・リジック・シハッブFPI代表
 二月末の一週間、中央ジャカルタのタナアバンに近いFPIの本部を訪れ、採用された新しい隊員は八十八人。ディスコを攻撃した際、経営者を恐喝した四人の幹部を脱退させたという。
 イスラム擁護戦線は、ジャカルタ暴動を経てスハルト政権が崩壊し、首都の治安が極端に悪化した一九九八年十一月、当時の国会や政府への過激な学生デモや、翌年の総選挙の治安対策の補助機関として国軍・警察が組織した自警団(パム・スワカルサ)の一つのグループとして発足。自警団の創設には、当時のウィラント国軍司令官、ジャジャ・スパルマン陸軍ジャカルタ軍管区司令官、ヌグロホ・ジャユスマン警視総監らがかかわったといわれる。
 当初は、治安当局をバックに、学生デモや一般市民を挑発し、騒乱状態を誘導するエージェント的な役割を演じたが、過去四年半の間に、イスラムのモラル再構築を掲げ、コタの華人経営のディスコ、マッサージ・ハウス、カラオケ、賭博場、ビリヤード、ゲームセンター、ダンスホールなど風俗営業の拠点を襲撃したほか、ブロックMの日系カラオケ店やナイトクラブをターゲットにしたこともある。
 白装束でトラックに乗り込み、「イスラムの戒律を順守せよ」と叫び店を破壊、金品を略奪する暴力行為を、警察はほとんど黙認してきた。 
 断食月や年末に集中する、こうした歓楽街の襲撃だけでなく、FPIは政治運動にも関与し、マルク紛争では「聖戦」を叫んでイスラム派の暴力に加担し、憲法に「イスラム法」を挿入するデモ、カトリック教会の布教攻撃、パレスチナ紛争をめぐる反米デモ、芸術大学襲撃など多方面の活動のほか、特に、一昨年の九・一一米国攻撃テロ以降は、米国のアフガン攻撃に抗議する米国大使館デモの中心的な存在だった。
 バリ島爆弾テロ事件の直後、マルク紛争に介入した「聖戦部隊」(ラスカル・ジハード)が、当局に解散させられたのに続き、FPIも活動を停止していた。
 最近は、来年の国政選挙を控え、組織のトップが反メガワティ派の政治家やイスラム団体が旗揚げした政治組織「貧困民衆信託戦線」(アンペラ)に参加するなど、新たな政治活動を活発化させている。
 FPI本部では、組織の名前を付けた爪切り、メモ帳、バッジなどFPIグッズを売り、講話活動でカンパを募るなど浄財を集めて活動資金にすると宣伝し始めたが、多数の隊員を抱える組織運営の資金源はなぞに包まれている。
 首都ジャカルタの治安警備の補助機関として治安当局が育てた組織が、ヤクザ集団ともいえる過激な政治組織に変身してきた背景には、首都の治安維持を担保にとる治安当局が、時の政権の権力維持を脅かす道具として、FPIなどの暴力組織が、常に、便利な存在になっているためだ。



2002年3月26日 じゃかるた新聞掲載

「外国人排斥はしない」 聖戦隊員募集中の
 イスラム擁護戦線 リジック代表が語る

 歓楽街襲撃で知られるイスラム急進派団体、イスラム擁護戦線(FPI)のハビブ・リジック代表は二十四日、じゃかるた新聞と会見し、ジハード(聖戦)部隊の募集は、イスラム同胞との連帯感を強める一方、国内のイスラム教徒の怒りを抑え、テロを回避することにも貢献できると主張した。バリ島爆弾テロ事件以降、インドネシアのイスラム指導者は慎重になっているとの見方を示し、外国人排斥などの行為には反対するとの意向を明らかにした。

 −日本が米国のイラク攻撃を支持していることをどう見るか。
 リジック代表 日本はイラク攻撃に関与するべきではない。日本国民の大半が戦争に反対していることは知っている。そのことを同じアジア人として誇りに思う。日本政府が米国支持の方針を出しているのは非常に残念だ。
 −米国を支持する国の外国人排斥運動の声が出ているが。
 日本人はもちろん外国人の排斥運動には反対だ。だが、感情的なイスラム教徒の中に、このような行動を取る者が出てくる可能性もあり、われわれも警戒している。ジハード戦士の募集は、国内でテロなどの混乱が生じないよう、怒りを静めるための方策の一つだ。
手振りを交え、熱弁を振るうリジック代表
手振りを交え、熱弁を振るうリジック代表
 −大規模なデモがないのはなぜか。
 ここでデモを行っても戦争は止められない。われわれが出来ることは、イスラム同胞として、米国の攻撃にさらされているイラク国民を支援することだ。
 −ジハード部隊の戦士はイラクに派遣するのか。
 ジハード戦士は、戦闘部隊と人道支援の二つに分ける。イラク周辺国の国境で調査を行っている同胞を通じ、支援を開始する。サウジアラビアにいる同胞を先にイラクに送り込み、様子を見た後、インドネシアから派遣する予定だ。戦闘部隊の戦士は、ボスニア、アフガン、フィリピン、アンボンなどで戦闘経験のある者を優先する。ある退役軍人から、すでに軍事訓練の協力を取り付けている。
 −フセイン大統領は独裁者との見方がある。
 フセイン大統領が不人気であることは知っている。イスラム指導者ではなく、社会主義を標榜するバース党の指導者だからだ。しかし、現在、主義やイスラムの宗派の相違は問題ではない。ブッシュという悪魔と戦うために、すべてのイスラム教徒を団結させることが先決だ。
 −国内テロへの懸念も高まっている。
 バリ島の爆弾テロ事件以降、国内のイスラム指導者が慎重になっていることは確かだ。イマム・サムドラ(同事件の容疑者)のような誤った行為をする者が二度と出ないよう、イスラム指導者は配慮している。バリ事件を契機として、イスラム団体を弾圧しようとする勢力もいるが、われわれは圧力を受けているとは感じていない。




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