ホーム
2004年2月4日 じゃかるた新聞掲載

H5N1型ウイルス検出 タイ、ベトナムと同型
 人へ感染の可能性も 鳥インフルエンザ

 農業省は三日、バリ島やジャワ島などで感染が確認された鳥インフルエンザについて、タイやベトナムで少なくとも十二人(三日現在)の死者を出している高病原性のH5N1型ウイルスだったと発表した。インドネシア国内では、三日夕までに人への感染は確認されていないが、毒性の強いH5N1型が検出されたことで、タイやベトナムと同様に感染死者が出る可能性も高まった。鳥インフルエンザは人の体内でヒトインフルエンザと交じり合い、新型インフルエンザが発生する恐れがある。最悪の事態を防ぐため、感染した鶏の徹底処分や感染者の早期発見などの対策を講じることが政府の急務となっている。

 農業省のトリ・サトヤ・ナイポスポス動物保健局長は会見で、「H5N1型ウイルスは家畜伝染病だが、人に感染する可能性もある」と述べ、国内の鳥インフルエンザ問題が危険な局面に入ったことを認めた。
 一方で「タイやベトナムでは死者が出ているが、同型のウイルスが確認された韓国、日本、台湾、カンボジア、ラオスでは人に感染していない」とも述べ、H5N1型ウイルスの発見が、即、人への感染につながるとは限らないとの見方を示した。

■人への感染はなし

 保健省の三日の発表によると、バリ、バンテン両州で実施した養鶏業者ら計二百二十二人の血液検査の結果、鳥インフルエンザ感染の陽性反応は出なかった。二百二十二人の中には、鳥インフルエンザに感染した疑いがあった、バリ島タナバン県の三歳半の男児も含まれている。
 保健省はさらに、ジャワ、カリマンタン両島など鶏の大量死が確認された八州で、約百人ずつ血液サンプルを採取し、検査結果を随時発表していく方針。

■鶏にワクチン投与

 焦点となっていたウイルスの型が判明したことで、政府は鶏へのワクチン投与など具体的な対策を講じ始めた。
 農業省によると、国内の民間企業三社から計十一億回分のワクチンを購入。感染が確認された鶏と同じ鶏舎内の鶏を処分する一方、確認地点から半径一キロ内の鶏すべてにワクチンを注射している。
 日本大使館の及川仁・一等書記官(農林水産省)は「これらワクチンを地域の末端まで行き渡せるかどうか、感染した鶏の選別・駆逐を徹底できるかどうかが今後の感染を防止する上で重要になる」と分析する。

■国際社会と連携強化

 国連食糧農業機関(FAO)インドネシア事務所の木本長・代表は、政府が早急に講じるべき対策として(1)過去に大量死した鶏のデータの洗い直しなど確実な調査の実施(2)鳥インフルエンザに関する養鶏業者への教育(3)血液採取の対象者の大幅な拡大−を挙げた。
 木本代表は「すでに人に感染したものの、発症に至っていないケースも考え得る。政府は現状を細かく把握し、国際社会とも連携しながら対策を講じることが必要。五日に予定されている農業省での会議でインドネシア側に提言したい」と述べた。
 FAOは三日、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の拡大阻止に向けて国際戦略を構築するため、ローマ本部で緊急対策会議を開催。インドネシアからも担当者が出席し、検疫態勢の強化などについて協議している。


バリ観光客にも影響 料理や見学先を変更
 鳥インフルエンザ

 バリ島の日系旅行会社は、インドネシアで鳥インフルエンザが確認された先月末以降、ツアーの食事のメニューを変更したり、見学先を変更するなどの措置を取っている。
 大手旅行会社のJTBや日本旅行などによると、ツアー内容に含まれている地元レストランでの食事で、鶏肉を使用していた料理を豚肉などに変更した。
 また、市内観光に含まれていたデンパサールやウブド、キンタマーニ高原などの伝統市場も、生きた鶏が販売されているとして、見学を取りやめたほか、オプショナルツアーのバードパーク見学も当面、中止する措置を取っている。
 日本旅行は「お客さまの不安を少しでも和らげるため、鳥インフルエンザの危険性が少しでもあるところは中止している」と説明している。



2004年1月27日 じゃかるた新聞掲載

政府の対応に批判 鳥インフルエンザ騒動
 「業界圧力で感染隠し」 食品、観光業界へ打撃

 二十五日にインドネシアで初めて鳥インフルエンザの発生が確認されたことを受け、政府のこれまでの対応の遅れに各界から批判が上がっている。二十六日付の地元紙は、専門家らの話として「鶏肉業界からの圧力で意図的に感染情報を隠ぺいした」と政府を批判。国会も問題を徹底追及する方針を示している。一方、バリ島では二十六日、養鶏所の鶏数千羽が焼却処分にされ、本格的な感染防止策が取られ始めた。インドネシアは、今冬、アジアで鳥インフルエンザが確認された国としては七番目となり、国民の健康管理だけでなく、食品、観光業への経済的打撃も避けられそうにない。

 農業省はこれまでに、鶏の大量死は昨年八月二十九日、中部ジャワ州プカロンガンで初めて確認され、九月から十一月にかけて、ジャワ、バリ両島などに拡大したことを認めている。
 その後の五カ月間で、全国十州にある養鶏場四百軒以上の鶏四百七十万羽が死亡、うち四割が鳥インフルエンザとニューカッスル病の混合ウイルスに感染して死亡した。
 国内で発見された鳥インフルエンザウイルスが、ベトナムとタイで感染死者を出すなど猛威を振るっている「H5N1」かどうかは不明だが、農業省によると、ウイルスのサンプルはすでに豪州の研究所に送付され、二、三日後に結果が判明する見通し。
鳥インフルエンザ感染拡大の恐れが高まる東ジャワ州ジュンブルの養鶏場
鳥インフルエンザ感染拡大の恐れが高まる東ジャワ州ジュンブルの養鶏場

■情報公開の徹底を

 これら政府の対応に対し、専門家は「昨年末には鳥インフルエンザはすでに確認されていたにもかかわらず、政府は問題を放置していた」として、情報公開の遅れに対する批判を強めている。
 国会のムハイミン・イスカンダル副議長(民族覚醒党)は二十六日、「政府は鳥インフルエンザに関する情報公開を徹底するべきだ。国民は病気を恐れ、鶏肉を食べることもできない」と述べ、感染経路などを早急に解明すべきと主張した。

■「人の感染はなし」

 東ジャワ州スラバヤを訪問中のソフヤン・スダルジャット農業省畜産育成総局長は同日、インドネシア国内でこれまでに、鳥インフルエンザに感染した人は報告されていないと明らかにした。
 今後の対応策については「ジャカルタ首都圏、西ジャワ州、中部ジャワ州、東ジャワ州、バリ州、リアウ島嶼州にまず専門家を派遣し、養鶏業者の血液検査を行う」と述べた。


総領事館が「お知らせ」

 在ジャカルタ日本総領事館は二十六日、「インドネシアにおける鳥インフルエンザについて」お知らせを出した。
 鳥インフルエンザの人への感染は、病鳥と近距離で接触したり、病鳥の内臓や排泄物に接触する仕事に従事する場合に起きるとして、(1)鳥インフルエンザの流行が見られる地域の鶏舎への立ち入りを避ける(2)鳥インフルエンザの流行が見られる地域において生きた鶏への接触を避ける(3)生きた鶏を扱う市場への立ち入りを避ける(4)うがい、流水での手洗いの励行−の予防策を挙げた。
 また、鳥インフルエンザに関する詳細について、厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)、世界保健機関ホームページ(http://www.who.int)を参照するよう在留邦人に呼び掛けた。



2004年1月26日 じゃかるた新聞掲載

鳥インフルエンザ確認 農業省が緊急発表
 ジャワ、バリなど広域 養鶏業者への伝染警告

 農業省のソフヤン・スダルジャット畜産育成総局長は二十五日、緊急記者会見を開き、国内で鳥インフルエンザと別種の鳥伝染病「ニューカッスル病」に感染した鶏計四百七十万羽(累計)を確認したと発表した。インドネシア政府はこれまで、昨年八月からバリ島や東ジャワなど各地で多発していた鶏の大量死について、人体への感染例がないニューカッスル病のみが原因との見解を取ってきたが、初めて鳥インフルエンザ感染を認めた。昨年、アジアを中心に猛威を振るった新型肺炎(SARS)より感染しやすいとされ、対策を誤れば深刻な事態に陥ることも懸念されている。政府は、家畜への感染拡大だけでなく、鶏から人間への感染を阻止する重要な緊急対策を迫られた。

 スダルジャット畜産育成総局長によると、感染が確認されたのは、東ジャワ州十三県、中部ジャワ州十七県、西ジャワ州六県、バンテン州一県、ジョクジャカルタ特別州三県、スマトラ島ランプン州三県、バリ州五県のほか、南カリマンタン、中部カリマンタン、東カリマンタン各州の一県ずつに上った。
 四百七十万羽は、国内全体の鶏の〇・一四%に当たり、政府の対策の遅れに批判が噴出するのは必至だ。
 だが、タイやベトナムと同様に人体に感染するタイプのウイルスかどうかは今のところ不明。

■犠牲祭前にも警戒

 スダルジャット総局長はまた、大量の家畜が食肉処理される来月一日のイドゥル・アドハ(犠牲祭)を前に、新たな家畜伝染病が発生する可能性もあると指摘。「獣医学の専門家を派遣し、犠牲祭用の牛や羊を調査する」と述べた。
 農業省はこれまでに、鳥インフルエンザの発生が確認された国からの鶏肉の輸入を禁止している。

■保健省対策チーム設置

 一方、保健省は二十五日までに、専門家から成る対策チームを設置、全国の養鶏場などで徹底調査を開始する方針を明らかにした。
 保健省のウマル・ファフミ伝染病管理総局長は、鳥インフルエンザは、SARSのように人間から人間へ感染した例は報告されていないが「鶏や家畜から人へ感染する可能性もある」として、特に養鶏業者への注意を呼び掛けた。

■ベトナムで死者6人

 世界保健機関(WHO)の発表によると、二十二日にベトナム南部のホーチミン市内で鳥インフルエンザに感染した少年(一三)が死亡。鳥インフルエンザ感染による死者は六人に達した。
 昨年十二月に韓国、今年一月に日本で確認された鳥インフルエンザは、ベトナム、台湾、タイに拡大。カンボジア、ラオスでも感染例が報告されており、東南アジア全域に感染拡大する様相を見せている。
 この問題を受け、鶏輸出国のタイ政府は二十八日、日本やベトナムなど関係国閣僚を招いて緊急対策会議を開催する予定。WHOは感染ルートの調査や予防ワクチンの開発を急いでいる。




ホーム | この一週間の紙面
 Copyright © PT. BINA KOMUNIKA ASIATAMA, BYSCH
 All Rights Reserved.