朝夕に拡大された新「3イン1規制」の取り締まりが二十六日、一斉に始まった。警察は規制区域の入口付近に検問所を設け、車の中を点検するなどテロ対策なみの厳しい規制。初日から違反切符を切られ、免許証を取り上げられた車が続出した。罰金は当初の最高千二百万ルピアから同百万ルピアに下がったが、通勤やビジネスに支障が出てはかなわない。警察の出方に半信半疑だった日系企業を含む規制区域内の企業は「乗り合い出勤」「裏口出社」「替え玉乗車」「時間差出勤」などの対応策で、前代未聞の交通規制を乗り切る構えだ。厳しい検問のせいか、夕方の目抜き通りはバスレーン同様流れはスムーズ。元ジャカルタ軍管区司令官のスティヨソ・ジャカルタ特別州知事も自信を深め、非難ごうごうの交通政策をジャカルタ名物に仕立てる意気込みだ。
■検問所はここだ
ジャカルタ警視庁によると、この日検問所を設けたのは、ガトットスブロト通りとラスナサイド通りの交差点、ガジャマダ通り、スディルマン通りのスマンギ交差点やスナヤン競技場付近、大統領宮殿前など十数カ所で、「当面は同じ地点でチェックする」(報道官)という。検問所以外にも、白バイが巡回し摘発するケースもあった。
■違反切符で免許証没収
大統領宮殿に近いメダン・ムルデカ・バラット通りでは、十数人の警官が手を挙げて車を徐行させ、フィルムが貼ってある車は窓を開けさせるなど、しらみつぶしにチェック。
|
検問所で違反切符を受け取る市民。西ジャカルタ・グロドックで。
|
検挙されたドライバーは五枚綴じの違反切符にサインをさせられ、免許証を没収された。警官によると、後日、裁判所に出頭し、簡易裁判で罰金刑に処せられる。罰金は最高百万ルピア。
セダンに二人で乗っていた会社員のヒダヤットさん(三五)は「急いでいたので夕方の実施をすっかり忘れていた」と肩を落とした。
警視庁によると、初日は午前七時から同十時までの取り締まりで百八十四件、午後四時から同七時までに数百件の違反が摘発された。
新しく規制対象になったコタ方面では検問所に五、六台の車が列をなし、違反切符を受け取るために並ぶ光景も見られた。
■知事は渋滞緩和に自信
この朝、検問状況を視察し、バスレーンに乗って登庁するパフォーマンスを見せたスティヨソ知事は「新規制がきちんと守られれば渋滞は起こらない。以前、視察したバンコクやマニラの渋滞はもっとひどかった」と述べ、3イン1効果でジャカルタの交通を一変させると豪語。その言葉通り、夕方の目抜き通りは、スディルマン通りの一部を除き、ガラガラになった。
■VIPには警備員
「毎朝、警備員が自宅へ迎えに行き、帰宅時は規制区域外まで同乗させる」のはバンク・インターナショナル・インドネシア(BII)。ただし対象は役員のみ。VIPをテロから守る警備も兼ねて、当分、この手で乗り切るという。
日系企業は、同僚やお手伝いさんとの相乗りや、遠回りを覚悟で裏道を利用する会社がほとんど。夕方は、帰宅時間をずらしたり、スタッフをもう一人乗せる対応を取っている。
■ビル会社も知恵しぼる
共栄プリンスビルは隣のビルの裏門を開放してもらい、入居者が裏道から出社できるよう便宜を図った。それでも共栄プリンスの正門までは、約十メートルほど規制区域を通過するため、ビルの職員が道路に立ち、警官がいる場合は、にわかジョッキー役(数合わせの乗員)を務めるという。
|
3イン1規制の検問場所
|
中には、当局が厳しい検問を続けた場合、「お客様の便宜を考えてジョッキーを雇うことも検討する」というビル会社もあった。
スミットマスビルは、これまでなかったタクシー専用乗り場を設けた。「三人以下で外出する際、規制対象外であるタクシーを利用できるよう準備した」としている。
■日本食店の客足に影響
夕方の規制で帰宅時間をずらした邦人が増えたせいで、ブロックMやスディルマン通りの日本食レストランは、「ご来店の時間が少しずれ込んでいる」という。
いつもなら開店早々、店が動き出すのだが、この日の客足はぱったり。ある日本食店のオーナーは「お客の回転率がかなり落ちるのではないか」と心配そうだった。
■車持たない人は賛成
一方、市民には賛成派も少なくないようだ。中央ジャカルタの両替商(三二)は「われわれ庶民はオートバイやバスを使うので影響はない。富裕層には問題だろうが、交通量も減っている」と肯定的な意見。
タクシー運転手(四八)は「マイカー族がタクシーに乗り換えるとも思えないので、収入は変わらないだろうが、主要道路が走りやすくなるのはいいこと」。毎朝、電車で通勤しているという女性は「3イン1制度が始まって電車が満員になった」と話した。