伝統的な生活様式を残す西ジャワ州スカブミ県チプタグラ村で四日、収穫祭が開かれた。収穫を神に感謝し、刈り入れた稲束を米倉に収める儀式だ。生物多様性保全プロジェクトでエコツアー計画などに取り組む、国際協力事業団(JICA)専門家の小沢晴司さん(41)らと収穫祭を訪ねた。
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棚田の下に三角屋根の米倉が並ぶチプタグラ村
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石が敷き詰められた急な山道を四輪駆動車で上ったり、汗だくになって歩く。シルナレスミから二時間ほど山道を行くと、こつぜんと、大きな家や米倉が立ち並ぶ立派な村落が現れた。
チプタグラ村の周囲に連なる山々の斜面には段々畑が切り出され、竹筒の樋で引かれた豊かなわき水が、田んぼを潤していた。
村で作っているのはジャワ原産のジャワニカ米(中粒種)。赤米も混ぜて炊く。軽食に出された「ウリ」は、もち米とヤシの実をついて粉にし、のし餅のようにして、切って揚げてある。塩味がきいて、香ばしい。かみしめるほど、味わいが増すようだ。
村で目に付くのは、米倉の多さだ。村では、米は自家消費用だけで、売ることを禁じている。二期作もせず、米を作って収穫するのは一年に一回だけだ。
収穫祭は、近隣村落などから来た大勢の人が見守る中、稲束をくくり付けた竹筒を担いだ男性や、稲束を入れたかごを持つ女性らが広場に入場して始まった。
稲束を吊した太い竹筒を左右に大きく振ると、「ブーン、ブーン」と鳴る。竹筒と、大きな竹アンクロンによる、竹の共鳴が広場を満たす。踊りながら、米をつきながら、歌う女性たちの声が混じり、大変なにぎやかさになった。
| かごに入れたり竹筒に吊した稲束、儀式に使う道具を運ぶ人々
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| 木をくり抜いた舟形の道具で米をつきながら歌う人々
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行列の一行には、自分の体をナイフで傷つけたり、お互いに木のむちで打ち合いながら来る男たちもいた。鶏を殺したり、ヤシの実を割って中から文字の書かれた紙を取り出す秘儀があった。
祈祷をしてから、米を米倉に入れる。チプタグラ村などのカセプハン民族を統括するアバ・アノム(「アバ」は父、「アノム」は若いの意)と呼ばれるスチプタ氏(36)が米倉に上がり、儀式を行った。その後、広場に運び込んだ米をすべて米倉に収めた。
村のウギス・スガンダさん(51)は「この村で一番いいのは、お互いの関係が密なこと。ジャカルタは個人主義的過ぎだと思う。ここでは、田んぼから水が漏れていたら、ほかの人の田んぼでも直している」と語る。ウギスさんは今月、ヨハネスブルクで開かれる地球サミットに先住民族代表として参加するという。
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稲束を米倉に運び入れる
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(手前から時計回りに)ピーナッツ、ウリ、揚げせんべいと、紅茶で朝食
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