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2002年5月6日 じゃかるた新聞掲載

海龍サンゴ礁の海 (4)サンゴの種類
 環境に適応した建築
 サンゴの中に褐色藻が大量に存在し、これがサンゴの生活エネルギーの大半を供給している、ということを前回書いたのだが、褐色藻はサンゴの中に居て、一体何の得があるのだろうか? 単にボランティアをしているのか、はたまたサンゴ自体が何らかの方法で褐色藻を捕獲して強制労働させているのであろうか?

■賄い付き高級アパート

 実は、サンゴと褐色藻は、どちらか一方が一方的に利益を得るのではなく、双方がちゃんとギブ&テイクの同棲、もとい共生関係となっている。
 褐色藻は、サンゴに石灰質で固められた鉄筋コンクリートの要塞を提供してもらっている上、このアパートは塩分濃度、水素イオン濃度の自動調整、紫外線カットフィルター付きの、極めて居心地の良い、超高級アパートメントとなっているのだ。さらにぜいたくなことに、このアパートは賄い付きで、単身赴任のお父さんも真っ青ものなのだ。
ミドリイシ
シュノーケリングでよくお目にかかるミドリイシ
 そもそも、サンゴ礁が発達する海は透明度が高い必要があるが、そうした海は、植物が絶対的に必要とする窒素、燐、鉄分などの溶解度が低い。褐色藻だって植物だ、これがなければ生きていけない。ところが、サンゴは、これらの養分を老廃物として排出するのだ。おまけは、サンゴが動物として呼吸する際に発生する二酸化炭素だ。これは植物の光合成にとって、なくてはならない。というわけで、サンゴと褐色藻はお互いにハッピー・ハッピーな関係を維持しているのである。

■盛り場を形成

 下請け会社があれば、さらにその下に孫請け会社があるように、サンゴ礁にも多数の孫請けが存在する。サンゴは褐色藻から受け取ったグリコーゲンのうち約半分を粘液の形で体外に排出するからである。
 かくして、この粘液を食べる小魚たちが集まり、さらにはそれを食らう魚もやって来るという、「人が人を呼ぶ」という盛り場が形成されていくのである。
 次回からは、このサンゴ礁という盛り場での興味深いお話を展開していく予定なのであるが、その前に、もうちょっとサンゴそのもののお話をしておこう。
 サンゴのように石灰質の体を構築する生物は、淡水中には海中ほど多くの種類がない。理由は簡単で、素材の供給量の問題である。海水中にはほぼ飽和状態で石灰が溶解している。従って、サンゴたちにとって、セメント供給は無尽蔵でしかもフリーなのである。

■石灰質構築物の形

 彼らの建設する石灰質構築物は、それぞれの生息する、もしくは、たまたまたどり着いた場所の環境に実に良く適応して最適の形を形成しており、興味深い。
 一口にサンゴといっても、丸っぽい岩状のもの、まるで木のように枝状のもの、じゅうたん状のもの、テーブル状のものなど、さまざまである。サンゴの種類が違うというのも、それはそれで正解なのだが、同じ種類でも場所によって形状が変わることがある。
 今度海中をのぞく時に注意して観察してほしい。ある場所には岩状のものが多く、ある場所では枝状のものが多いということに気がつくはずだ。

■光と強度の2命題

 サンゴがどのような建築をするかで、最も大きな要素は光である。褐色藻にせっせと光合成をしてもらわなければならないため、光を可能な限り取り込むことが最大の命題である。その命題に対する逆課題が強度の問題である。
 光が強い、比較的浅い場所では、波の影響をもろに受ける。そうでなくても、潮の流れの力は陸上での風の力とは段違いに強い。一定の地所で受光量を上げるためには単に平面展開するのでなく、上方に立体展開すればよいのであるが、高層建築と同じで無制限に高くできるというものでもない。海水の動き具合に対応して、自ずと高さに限界が生じてくる。
 高さに限界があればどうするか。枝を張り、その先を大きく葉っぱ状に展開すればよい。この理屈は、陸上の樹木とまったく同じである。「ウスコモンサンゴ」は、通称キャベツサンゴと呼ばれているように、まさに収穫前のキャベツのような形を形成している。
キャベツ・サンゴ
踏んだら、バリバリとすぐ壊れそうな「キャベツ・サンゴ」は現在もプラウ・スリブで健在
 場所によっては強度を優先しなければならない。強度を高くするには表面面積を少なくすれば良い。塊状のサンゴが存在する所以で、塊状サンゴは波の影響の強いサーフゾーンに近い場所で良く見られる。

■テーブル、じゅうたん

 樹状、もしくはテーブル状のサンゴを見かけたら「ミドリイシ」の仲間と思えば、ほとんどの場合正解であるが、テーブル状のものも、良く見れば、低い樹状のものを平面展開した構造となっている。これは、比較的浅場の波の動きに対応した強度を追求した結果で、水の動きが穏やかな場所では完全な枝状になる。
 じゅうたん状のものだが、これは比較的深い場所で見られる。じゅうたん状は平面の展開であるから、地所当たりの受光効率は一番悪い形態であり、元々深場で光量が少ないのに、なぜこのような形態が選択され得るのであろうか? これは地所当たりでなく、体の体積当たりの受光効率を追求した結果なのだ。
 元々光が少ないから石灰質製造スピードが遅い=成長速度が遅い。そこで、最小の体の体積で最大の受光量となると、薄く平たくという形態となるのである。
 競合者であるほかのサンゴは浅場に住んでいるので、深場は土地が広いと言うことで、概して田舎の家の方が都会の家より広いのと同じことである。

■異なる危機管理

 塊状サンゴは成長が遅いが構造物の密度が高く、壊れにくい。枝状サンゴは成長が早いが、その分、構造物の密度が粗く折れやすい。折れても成長が早いからそのうち復興する。水の流れというリスクに対してまったく異なるリスクマネジメントが行われているわけで、非常に興味深い。
つづく

海龍亭

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