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2002年3月25日 じゃかるた新聞掲載

海龍サンゴ礁の海 (1)サンゴの生育条件と海域
面積世界最大はインドネシア
島全体がリーフ
豪州グレート・バリア・リーフにある島。島全体がリーフに囲まれている
 前回のシリーズ「海龍のダイビングの楽しみ」ではスキューバダイビングって楽しいぞ、ってな趣旨でお話を進めたが、今回のシリーズではスキューバダイビングではもちろんのこと、シュノーケリングでも垣間見ることのできるサンゴ礁の海のお話をしよう。
 もう気が付いた人もいるかもしれないが、珊瑚礁ではなくてわざわざサンゴ礁と書いているのには多少の訳がある。
 浦島太郎の竜宮城で出てくる「さんご」は黒珊瑚に代表される宝石類の一種として認識されており、こちらは比較的深い海に生息し、八方サンゴという仲間に属するものである。一方、サンゴ礁を形成している「さんご」は六方サンゴという仲間に属する(造礁さんごと呼ばれる)もので、区別のために筆者が勝手に、便宜的にカタカナ表記をしているものだ。

■水温・水深・透明度

 さて、以前のシリーズの中で、インドネシア周辺は世界で有数のサンゴ礁の美しい海といったことを書いたが、サンゴ礁っていうのは熱帯、亜熱帯に行けばどこでも見られるものではない、ということをここでは強調してみたい。
 サンゴ礁が発達するには、次の三大条件を満たす必要があると言われている。
サンゴ礁観察用のプラットフォーム
豪州グレート・バリア・リーフに設置されているサンゴ礁観察用のプラットフォーム。接舷している船は約200人乗りなので、その大きさが分かる。プラット・フォーム上にはダイブショップ、食堂、売店などが設置されている

 (1) 水温が18.5℃以下にならないこと
 (2) 水深が40メートル以下の浅い海であること
 (3) 水が透明であること

 なんとなく、上記の条件なら、熱帯、亜熱帯の沿岸地方はすべて当てはまるような気がすると思うが、実際にはそうではない。

■大陸の東側に集中

 大陸の東側は西側に比べて圧倒的にサンゴ礁が発達している。これは、地球の自転による海流の影響で、大陸西側は寒流により、水温が低下するからと説明されている。
 さらに同じ大陸の東側でも、大きな河川の流れ込む海域はサンゴ礁が発達していない。中国の沿岸地方や南アメリカ、ペルシア湾などがその例である。これは、河川から運ばれる泥の影響で海水の透明度が落ちるからであると言われている。
 じゃあ、上記の三条件がなぜ必要なのかは、次回にお話しするとして、なんやら、かんやらの理由で、インドネシア、フィリピン、北部オーストラリア、ニューギニアの一帯は300種類以上のサンゴが生息する世界最大のサンゴ礁海域となっている。ちなみに沖縄は200種類ぐらいであり、ハワイ辺りとなると50種類くらいまでと少なくなってくる。
 先日、友人が国連機関のサンゴ礁に関する最新調査資料というものを送ってくれた。世界中のサンゴ礁の総面積は28万4,300平方キロメートル(フランス一国分の面積に相当)で、全海洋面積のわずか0.1%なのだそうだ。
 ちなみにサンゴ礁の面積での世界ベスト5を挙げてみると次の通りとなる。


1 インドネシア 5万1,020km2 17.95%
2 オーストラリア 4万8,960km2 17.22%
3 フィリピン 2万5,060km2 8.81%
4 仏領の南太平洋諸島 1万4,280km2 5.02%
5 パプア・ニューギニア 1万3,840km2 4.67%


グリーンアイランド
豪州グレート・バリア・リーフの玄関口ケアンズ市沖合いのグリーンアイランド

■危機に瀕するサンゴ礁

 いかに前述の海域にサンゴ礁が集中しているかがお分かりいただけたと思うのだが、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアのサンゴ礁の90%以上が、違法なダイナマイト漁や毒物を使用した漁法のために瀕死の状態となっているらしい。サンゴ礁を徹底的に保護する方向にあるオーストラリアでさえ32%相当の地域が危険状態とみなされている。
 プラウスリブ諸島の中に、プラウ・ブランダという島がある。本当かどうかは知らないが、スハルト元大統領の別荘があったとかないとかで、この島の周囲は特別保護地区指定となっており、漁師はおろか一般のダイバーも立ち入ることが許されていなかった。
 筆者も昔、こっそりと潜ったことがあるのだが、それは素晴らしいサンゴ礁の世界が広がっていた。今日でも保護地区であること自体には変わりはないはずなのであるが、いまやボロボロの廃墟である。「レフォルマシ=何でもあり」の漁師たちによる魚の宝庫に対するダイナマイト大攻撃の果てである。
 南アジア全域でこのようなことが起こっているのであるが、これは人々への啓蒙と取り締まりで本来はなんとか防げるはずのものであるが、なぜオーストラリアでさえ、サンゴ礁が危機に瀕することになるのかというのは、これからおいおい書いていこうと思う。(つづく

海龍亭

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