日本で農業研修を受けるインドネシアの若手農業者四十五人が一日、在インドネシア日本大使館をあいさつのため訪れた。全国から選抜された二十二−二十八歳の農家の若者で、同日夜に日本へ出発、東京、福井、新潟、群馬など各地の農家にホームステイするなどして八カ月から一年間にわたる研修を受ける。
■「ソフト面学べる」酪農、園芸が人気
ホームステイ先はそれぞれの希望に合わせてあり、人気は酪農や園芸などインドネシアでは比較的新しい分野という。
研修は、日本の農水省、外務省関連の社団法人・国際農業者交流協会(東京都大田区)の事業で、毎年実施している。一九八四年に開始され、インドネシア人研修生は延べ約六百人に上る。
大使館では、農業人口の高齢化、若手農業者の育成などが課題となっている日本の農業を紹介するビデオが上映された。研修生たちは「新潟、新潟」「コメ」など日本語でささやきながら、自分たちが訪れる土地や田畑の風景を一心に見入っていた。
堂道秀明臨時代理大使は「日本とインドネシアはずっと以前から、農業分野における協力関係を築いている。作物栽培技術、灌漑水路の建設、研修受け入れや専門家派遣などだ。インドネシアの農業が日本の農業と同じように発展することを願っている。実り多い研修生活を送ってください」とあいさつした。
研修生代表のグントゥールさんが日本語で「日本で良いことを教えてもらい、インドネシアに帰ってから、その良いことをやってみて、頑張りたい」と抱負を述べた。
日本大使館の作田竜一・一等書記官は「採れた作物を商品にするためにどう気を使っていくかといった栽培管理、経営などが重要となってくる。日本ではそういうソフト面が学べるのでは」と語った。
■「以前からあこがれ」四季や生活も楽しみ
日本政府の招きで日本へ留学するインドネシアの国費留学生六十二人の壮行会が一日、中央ジャカルタのホテル・サリパンパシフィックで開かれ、留学生や堂道秀明臨時代理大使ら在インドネシア日本大使館関係者、国費留学生選考委員らが参加した。
壮行会であいさつに立った堂道臨時代理大使は「立派な成果と日本に対する深い理解をお土産に帰国して、日本で得たものを活かしながらそれぞれの分野で活躍し、インドネシアの発展に貢献されることを期待します」と語り、留学生一人一人に握手をしながら激励の言葉をかけた。
真新しいスーツ姿の留学生たちはジョクジャカルタで四カ月間学んだという日本語で大使館関係者や選考委員らにお礼のあいさつを述べ、井上陽水の「少年時代」や「ブンガワン・ソロ」を合唱して会場を沸かせた。
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堂道臨時代理大使を囲み、記念撮影に収まる農業研修生
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一年間、大阪で日本語を学習した後、電気工学を学ぶために日本の大学を受験するというソニー・クルニアワンさん(一八)は「父から日本文化の素晴らしさを聞いており、以前から日本へのあこがれを持っていた。四季の移り変わりなど日本での生活を楽しみながら、将来のインドネシアを背負っていけるよう日本の電気工学を吸収していきたい」と抱負を語った。
応募者二千五百人から選ばれた留学生たちは同日夜、日本に出発。一年間日本語研修を受けた後、大学院、大学、高等専門、専修学校で三−五年間の留学生活を送る。
インドネシア学生の日本への留学は戦前から行われており、戦後の賠償留学生にはギナンジャール国民協議会副議長らがいる。現在も文部科学省がインドネシア留学生の受け入れを行っており、約千四百人のインドネシア人留学生が日本で学んでいる。