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2007年12月10日 じゃかるた新聞掲載

マンション特集(2)
悪質な開発業者に注意
 名義人と契約書作成を マンション購入の法的問題

 日本人をはじめとする外国人が分譲マンションを購入するケースが増加するのに伴い、さまざまな法的問題も生じている。インドネシアの法律に関する知識不足から日本人が直面しやすい問題について、ジャカルタで活動する弁護士に話を聞いた。
 マンションを購入する場合、日本人が留意すべきポイントとして、南ジャカルタ・クニンガンにあるファリーダ法律事務所のイク・ファリーダさんは「まずマンションが建てられた土地の種類を確認することが先」とアドバイスする。
 マンションの種類は大きく分けて二つある。政府が所有する国有地に開発業者が土地利用権(Hak Guna Bangunan=HGB)を取得し、マンションを建設、購入者に部屋の使用権(Hak Pakai=HP)を売却するもの。インドネシアに滞在する外国人の取得が認められているのはこの使用権で、最長七十五年の有効期間を得られる。
 もう一つは、開発業者が所有権を保有する土地にマンションを建設し、購入者に所有権を売却するというもの。所有権を取得することはできない外国人も、インドネシア人の名義で購入することができる。だが、この際に作成する委任状や契約書が将来的に問題になることが多いという。
 ファリーダさんによると、日本人によくあるケースは、「長年の知り合いで信頼できるパートナー」と信じ込み、インドネシア語が分からないなど言葉の問題もあり、手続きを任せっきりにすることから問題が生じるというもの。
 名義人が自ら委任状や契約書を作成し、日本人もこれを第三者に確認せずに公証人(ノタリス)に持ち込み、署名してしまう。公証人は、依頼人と名義人の両者が内容について同意していれば、基本的に承認するという。
 ファリーダさんは「日本とは異なり、名義人を立てたり、名義人が委任状や契約書を作成することはインドネシアの民法で認められている合法的な行為。しかし、法の抜け穴を利用するとの印象が強いためか、人に知られないようにして手続きを進めてしまう。公証人に委任状の作成段階から依頼したり、弁護士に相談することで問題を避けることができる」と強調する。
 同事務所の鬼正一顧問は、分譲マンションの売買だけでなく、企業の登記でも同様の問題が頻発してきたと指摘。実際にあったケースで、長年雇っていた運転手の名義で会社を設立、その家族を役員に登録した。ところが会社が成長し、その運転手が突然「私の会社だ」と主張し始め、法的に何の権利もない日本人の社長を追い出し、乗っ取ってしまったという。
 鬼さんは「マンションも同様で、価値が変わっていくもの。購入する際は名義人との間で、実際の所有者や相続者は誰なのかといった具体的な項目を盛り込んだ契約書を作成することが大切」と話す。
 一方で、国有地に建てられたマンションの使用権を日本人の名義で取得する場合は、このような名義人を立てる必要がない分だけ問題は少ない。法的なリスクを避けるためにも、日本人が購入するにはこのようなマンションの方が適切とアドバイスする。
 また近年、外国人の高齢者が一時的に使用するためにマンションを購入するケースが増加。十一月から四カ月、日本が冬の間だけジャカルタで暮らそうとマンションを購入し、使用していない期間はマンションの開発業者を通じて第三者に貸し出している日本人もいるという。
賃貸マンションの分譲マンション販売価格の推移
賃貸マンションの分譲マンション販売価格の推移

■購入前に点検を

 非政府組織(NGO)の法律擁護協会(LBH)ジャカルタ支部民事担当弁護士のガトット氏は、一定期間だけ利用したり、投機の対象として購入するケースが増え、こうした購入者からできるだけ利益を上げようとする悪質な大手開発業者もいると指摘する。
 「一九八八年政令第四号で、所有権を取得した購入者は入居者協会(PPRS)を組織し、共同で利用できる施設の管理、警備業者の指定を行う権利などが認められている。しかし、開発業者が内部者で協会を組織し、関連会社の火災保険や警備、電気、上下水道などの管理を一手に引き受け、施設の不備など問題が生じても購入者が文句を言えないような体制を作っている」
 ガトット氏はまた、今後建設ラッシュが激化し、メンテナンスがしっかりと行われないマンションが増えることで、補償問題などが続出する可能性があると警告。「インドネシアでは大手開発業者は絶大な力を持っている。訴訟で入居者が勝訴したケースはほとんどなく、有力紙の読者欄にメンテナンスの不備を批判する投稿が掲載されただけでも、マスコミ側に圧力がかけられるのが現状だ」と指摘する。
 ガトット氏は「マンションは年月が経てば古くなる。安易に投機の対象にしても、すぐに老朽化して売却できなくなる可能性もある」と購入を計画する人たちに注意を呼び掛け、「購入前には少なくとも耐震性や水漏れなどを確認し、管理者の対応などを把握する必要がある。入居者の権利が十分に保護されない現状では、後々泣き寝入りしないよう慎重になってほしい」と話した。
ジャカルタ州内の賃貸マンションの契約率
ジャカルタ州内の賃貸マンションの契約率


不動産雑誌が急増 デザイン、インテリア系が人気

 不動産ブームの追い風を受け、不動産関連の雑誌も続々と登場している。
 居住、投資目的を問わず、マンションや一戸建ての賢い購入方法に始まり、床面積に応じた効率的な家の間取りやデザイン、インテリア、さらには建築資材の選び方など、本屋やスーパーの雑誌コーナーに行くと、不動産関連の書籍がところ狭しと並んでいる。
 チプトラ・グループのチプトラ氏ら不動産業界の実業家が創刊した一九八〇年代からの老舗不動産月刊誌「プロパティ・インドネシア」は発行部数が約二万六千部。不動産関連のビジネス情報などを盛り込む。同誌のアリニ・ユニタ編集長によると、現在、不動産ビジネスを取り扱った主要雑誌は同誌を含め五誌。しかし、家のデザインやインテリアなどに焦点を当てた雑誌は多数存在するという。
 その多くは、販売価格が二万ルピア台(約二百五十円)と、インドネシアの物価から考えると高めだが、近年、富裕層を中心にデザインや建築様式をより意識するようになったことから、売れ行きは安定的に推移している。
 「プロパティ・インドネシア」の十二月号は、毎年恒例となっている「この一年の不動産業界と来年の展望」がテーマ。ユニタ編集長は「今年は昨年より好調だったが、来年は翌年に選挙を控えることもあり、そのペースは緩やかになるだろう」と分析している。
ジャカルタ州内の賃貸マンションの賃貸価格の推移
ジャカルタ州内の賃貸マンションの賃貸価格の推移


つづく


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