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2007年12月8日 じゃかるた新聞掲載

マンション特集(1)
不動産業界が活況
 ジャカルタ州内の分譲マンション数 2009年にほぼ倍増へ


マンションが競い合うように立ち並ぶ中央ジャカルタのカサブランカ通り付近
マンションが競い合うように立ち並ぶ中央ジャカルタのカサブランカ通り付近

■すでに「供給過剰」?

 現在のマンション建設ラッシュについて、大手デベロッパー・グループのジャカルタ・スティアブディ・インターナショナル社で分譲居住案件を担当するサヌシ・タナウィ取締役は、全般的には供給過剰の状態と指摘する。
 同社は、中央ジャカルタのスカイライン・ビルや最近、分譲開始された高級マンションのスティアブディ・レジデンスなどを手掛けるほか、伊藤忠と提携し、西ジャカルタのプリ・ボタニカル・レジデンスなどを開発している。
 サヌシ取締役は「需給状況はアンバランスとなっており、賃貸料も低下、賃貸期間も二年から一年へとシフトしている。一年後にはより安い価格でより良いファシリティーの物件を賃貸できる可能性があるためだ」と語る。
 分譲マンションの販売価格も、原油価格高騰に伴う建材価格の値上がりなどで上昇、ポートフォリオ投資も株式や債券など選択肢が増えており、マンション投資に以前ほどの勢いはないという。

■高利回りがアジアで注目

 しかし、アジアの近隣諸国と比べると、まだまだ割安。そのため、外国人が直接、所有することはできないものの、海外の投資家の注目が集まっており、さまざまな形で資金が流入している。
 サヌシ取締役によると、平米当たりの価格が安く、アジアのマンション市場における対インドネシアの投資利回りも、二%台の日本、三、四%程度のシンガポールを大きく上回る一一%前後と域内で最高の水準。九年ほどで投資資金を回収できる計算だ。
 マレーシアやシンガポールのように、外国人の不動産所有が部分的にでも認められれば、外国からの不動産投資はより一層活発になるとして、不動産業界では、政府に規制緩和を働き掛けているという。

■複合型がトレンド

 鹿島建設の関連会社スナヤン・トリカルヤ・スンパナ社の大石修一社長は、近年のマンション開発の傾向として、プールなど従来のファシリティのほか、オフィス、ショッピングモール、ホテル、公園などが併設された複合型が増えていると指摘する。
 同社は、九〇年代から、高級ショッピングモールのプラザ・スナヤンを備えた複合型の「スナヤン・スクエア」を開発、オフィスビルのテナントやマンションの住人がショッピングモールの顧客として期待できるなど、相乗効果があるのが利点だという。
 日に日に州内の渋滞が悪化する中、容易なアクセスなどの利便性からも複合型の魅力が一層高まっており、ジャカルタ内でも多くの新規プロジェクトが進行中となっている。

ジャカルタ州内の分譲マンション戸数の推移(戸)
ジャカルタ州内の分譲マンション戸数の推移(戸)

■建設とん挫のリスクも

 近年のジャカルタにおける新規マンション開発は、賃貸でなく、分譲形式が大半。開発の早い時期になればなるほど価格が安く、住宅ローンより現金で支払う比率が高ければ高いほど割引率も高い設定となっている。
 その背景にあるのは、効率的な資金回収。金融機関からの融資や社債発行を通じた資金調達よりも、早いスピードで資金を回すことができるため、物件が完成する前に購入者から資金を集め、開発資金に充てるケースが増加している。
 マンション需要が右肩上がりに急成長し続ける状況でこそ機能する方式ともいえるが、最近は、デベロッパー間の競争も激しくなっており、計画通りに販売が進まないと、建設資金がショートし、開発がとん挫するケースも発生している。
 コピラス社のサヌシ取締役は「実際にマンションができてみると高い価格でも買われているのが現状だが、バブルの懸念がないとは言えない。実際に開発が止まり、購入者がデベロッパーを訴えるようなケースも出ている」と指摘。そのため、消費者側も、信用があるデベロッパーかどうかを購入の大きな判断要素とする傾向が強まっているという。
 しかしながら、全体の平米当たりの単価は依然として上昇傾向にある。STS社の大石社長は「完成前に二度も三度も転売される投機的な取引も多く、現在の状況はミニバブルと言える」と分析。「今後、バブルが弾けないようにするためには、マンションを購入できるような中産階級を増やしていくことが不可欠だ」との見方を表明した。
 直接投資の誘致で雇用を創出し、市民の収入レベルを引き上げていくことにより、中長期的にマンションを購入できる層を拡大していくことができるかどうかが今後の市場拡大のカギになると言えるだろう。

ジャカルタ州内の分譲マンションの販売率
ジャカルタ州内の分譲マンションの販売率

新興中産階級が台頭し 新たなライフスタイル

 これまでのマンション需要は、インドネシア人富裕層が購入した物件を外国人駐在員に賃貸するケースが大半を占める構図だったが、ここ数年の新規マンション開発は、投資目的で高級物件を購入する富裕層のほか、九七、九八年の経済危機で大打撃を受けた後、再び台頭し始めた中産階級層もターゲットに、購入者自身が居住する一ルームマンションといった小規模物件など、選択肢も増えている。
 サヌシ取締役によると、高級物件は賃貸や将来の値上がりを見込んだ富裕層の投資目的が大半。五億ルピア(約五百九十万円)以下の小型物件は居住目的の購入が六割程度を占めるとみている。
 特にスディルマン、タムリン、ラスナサイド通り周辺(CBD)の小型物件のターゲットとして注目しているのは、金融業界などで働き、そこそこの収入があり、若い世代で独身、または共働きの夫婦のみの世帯の新興中産階級。平日はジャカルタ中心部のこぢんまりとしたマンションに住み、週末は郊外に持つ一戸建ての住宅でゆっくりと過ごすケースが増えているという。
 ジャカルタ内の販売だけでなく、地方の富裕層を取り込もうとする動きも進んでおり、マンション販売各社は地方都市でのセールスを積極的に展開。そのためか、週末になるとジャカルタに上京し、マンションに住むという層も生まれつつある。
 サヌシ取締役は「CBDの五億ルピア未満のマンションの需要は高く、まだ供給は少ない。特にタムリン・レジデンスやバクリー・グループのグルーヴといったスディルマン通り周辺の中心部の物件はまだ需要が高い。それ以外の分譲マンションの販売は厳しくなっており、地方へ販売攻勢をかけている」と語った。 

つづく


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