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2004年1月9日 じゃかるた新聞掲載

総選挙 2004

「スハルト時代に帰ろう」 「80年代安定政治復活を」
 憂国職能党 ハルトノ党首と会見

 スハルト元大統領の長女、シティ・ハルディヤンティ・ルクマナ(通称トゥトゥット)氏が、憂国職能党(PKBP、R・ハルトノ党首)の大統領候補に指名されたニュースは政界に波紋を投げた。トゥトゥット氏の立候補は、十二日開会の全国代表者会議まで不透明な部分があるが、メガワティ政権打倒を目指し、あえて政界に打って出たハルトノ党首に、その狙いについて尋ねた。ハルトノ氏はスハルト大統領の元側近で、陸軍参謀長、情報相、内相を歴任した守旧派を代表する人物。国民の間に広がる「スハルト時代を懐かしむ症候群」に便乗し、ゴルカル党幹部ら守旧派と接触していることを認めた。

 −元軍人のあなたが、なぜ憂国職能党を結成したのか
 ハルトノ党首 一九九八年五月、スハルト大統領が退陣した後(政権を支えてきた)ゴルカル(職能グループ)が新しい指導部に握られた。「ゴルカルの組織をわれわれの手に取り戻すべきだ」と、多くの友人たちが私に提案してきた。九八年当時、二十一州の知事は退役軍人で占められていた。私は陸軍参謀長だったので、彼らを引き付けるのは容易だったからだ。
 スハルト氏に伝えたところ、スハルト氏は「ゴルカルを取り戻す必要はない。ゴルカルはやがて崩壊する」と答え、許しを得られず、「新しい政党をつくるべきだ」とのアドバイスを受けた。私はすぐには政党を作らず、まず非政府組織(NGO)を立ち上げた。その後、二年間、この組織のバックにスハルト氏がいるということで全国から支持者が参加し、彼らが政党にしてはどうかとの声が強まり、二〇〇二年十一月に党を旗揚げした。

 −今回の選挙でもスハルト氏の支持を得ているのか
 全面的な支持を得ている。この党はスハルト氏の命令で設立されたからだ。そのことを国民に説明し、支持を呼び掛けている。党の発展状況や幹部会議の内容についてスハルト氏に常に報告してきた。
会見中も支持者から電話が殺到。党本部の部屋で会見に応じるハルトノ氏
会見中も支持者から電話が殺到。党本部の部屋で会見に応じるハルトノ氏
 現在、スハルト氏は病気で、コミュニケーションが困難な状態のため、具体的な指示を一つ一つ出すことはできないが、年長者として(成功するよう)祈っていただいている。
 しかし、私はいつもスハルト氏に「ここまでやりました」「今後、こうしようと思っています」と報告している。コメントをいただくのは難しいが、報告するのは、スハルト氏の命令を受けた者のモラルだと思っている。

 −党綱領はどのようなものか
 党の方針は明快だ。スハルト政権の柱だったパンチャシラ(国家五原則)を基にしたナショナリストの党だ。スハルト政権が最も国民に繁栄をもたらした一九八〇年代後半当時の状態を回復させ、経済、福祉、宗教、治安などあらゆる面で発展させることだ。スハルト氏は、国家のイデオロギーとしてパンチャシラに確信を持っていた。現在、パンチャシラを実践しようとするどころか、唱えることもしなくなった。

 −どんな政策を訴えるのか
 スハルト政権当時は三政党しかなく、政治は極めて安定していた。経済では、コメの自給自足を達成した。社会文化の面では、現在、女性があからさまに肌を露出させるなど性表現を問題視しなくなった。これは、東洋人として受け入れることはできない。
 スハルト氏は地方へ行き、直接国民の声を聞いた。現在、プールを作ってほしいなどという国民の声どころか、道路が壊れても修復されず、農民が収穫物を輸送するのにもコストがかかり、収入が減少している。このようなことは以前は起こらなかった。
 治安では、アチェ、パプア、ポソなどの地方紛争も解決していない。ジャカルタでも現在、夜間外出するのも恐いほどだが、以前は安全で、日本人も落ち着いて暮らせた思う。

 −スハルト時代は良かったというわけか
 SARS「スハルト時代郷愁症候群」(Sindorome Amat Rindu Suharto)という言葉が流行しているが、それは後から出てきたものだ。本当は、スハルト氏が退陣した当時から、すべての人々が泣き、スハルト氏の時代を恋しがったのだ。

 −大統領候補にトゥトゥット氏を指名する理由は
 トゥトゥット氏は国民に広く知られた著名人であり、善良で聡明な人物。これぞインドネシアの女性といった人だ。大統領選への出馬要請が相次いでいる。このことをスハルト氏に伝え、意見を聞いたが「よく考えるように」と言われた。近日中にスハルト氏と会い、最終的な結論が出るが、彼女は著名な人物であり、党や有権者の要望に応えると思う。

 −大統領一家への国民の批判は強いが
 トゥトゥット氏に向けられたKKN(汚職、癒着、縁故主義)批判については、人がそう言っているだけであり、法的に証明されなければならない。

 −選挙戦はどう展開するのか
 「できるだけ多く」の得票率、議席数を確保することが目標だ。他党との連合はまだ考えていない。党としての交渉はまだ行っていないが、個人の立場でゴルカル党の幹部とは内密に話をしている。

 −スハルト氏の健康状態はどうか
 スハルト氏はイスに座ってテレビを見たりして過ごしている。好きなテレビ番組は、ゴルフ、サッカーなどのスポーツだ。幽霊が出てくるミステリーの連続ドラマも好んで見ている。昨年、スハルト氏の誕生日パーティーにコメディアンが来たが、面白い場面で笑うことができなかった。テレビを見ていても感情を表すことは困難なようだ。脳梗塞で後頭部の脳神経に障害があるからだろう。



2004年1月14日 じゃかるた新聞掲載

トゥトゥット氏が演説 「国家イメージ回復を」
 大統領選出馬は未定 憂国職能党代表者会議

 スハルト元大統領の長女、トゥトゥット氏が大統領選に立候補するかどうかで注目されている憂国職能党の全国代表者会議が十二日、ボロブドゥール・ホテルで開催され、開会のあいさつに立ったトゥトゥット氏は「インドネシアの威信を回復するため、党員に団結するように」と呼び掛けた。大統領選に出馬するかどうかは未定と語った。
 ハルトノ党首も十三日、記者会見し、「トゥトゥット氏は出馬について最終決定していない」と、今回の会議中に党の戦略とともに協議する方針を示した。
 十二日の演説でトゥトゥット氏は「かつてインドネシアは海外で敬意を表されたが、現在はテロで非難されている。インドネシアのイメージを回復するのは、すべての党員の任務だ」と語った。
 トゥトゥット氏を擁立する方針を固めている同党地方支部代表らに対しては、「選挙キャンペーンを行うため、私が地方へ遊説する用意がある」と表明、参加者の喝さいを浴びた。



2003年12月6日 じゃかるた新聞掲載

政財界に波紋呼ぶ スハルト氏長女
 トゥトゥット氏の出馬

 一九九八年五月のジャカルタ暴動を契機に辞任したスハルト元大統領の長女で同大統領の後継者と目されたこともあるトゥトゥット氏(五四)=元社会相、実業家=が、スハルト派の少数政党、民族憂慮職能党(PKPB)をバックに政界復帰を目指す動きは、政財界に大きな波紋を投げかけている。スハルト政権崩壊後、ハビビ、アブドゥルラフマン、メガワティと続いた三政権への失望感が広がり、国民の間に「指導力のある大統領」を期待する懐古ムードが高まる一方、五年ぶりの国政選挙に登場する候補者は新鮮味に欠けており、知名度、資金力ではかなりの力を持つトゥトゥット氏が、来年の選挙の台風の目になってほしいという守旧派の期待があるからだ。
 総選挙で一定の得票が必要な上、トゥトゥット氏の政治力が未知数で、仮に大統領候補になったとしても、メガワティ陣営の脅威になる可能性は少ないが、政治資金をめぐって、かつてスハルト政権を支えたゴルカル党の選挙運動や政党間の駆け引きに影響を与えることが予想され、トゥトゥット氏の出方次第では、二〇〇四年の政治動向に少なからず影響を与えることが予想される。
 国際戦略研究所(CSIS)のJ・クリスティアディ研究員は「トゥトゥット氏の出馬はゆゆしき事態。守旧派の力を軽視すべきではない」と述べ、鳴りを潜めていたスハルト政権支持者の復活に懸念を示した。
 その背景には、改革機運が薄れたことへの国民の失望感と政治へのあきらめムードがある。「独裁だったが雇用も治安も安定していたスハルト体制」を懐かしむ国民の声に勢いづいた守旧派が、勢力復活を狙うとの懸念が、改革志向の知識人にある。
 これに対し、トゥトゥット氏が旧ゴルカルの副党首だった当時、同じ組織の指導者だった現在のゴルカル党のアクバル・タンジュン党首は、「トゥトゥット氏は、国会選挙で最低五%の議席か三%の得票率を確保しない限り、大統領候補にはなれない。ゴルカル党が選挙で影響を受けることはない」とトゥトゥット氏の政治力を無視する構え。大統領選に立候補を表明しているアミン・ライス国民協議会議長も「得票率三%の条件をクリアできるのであれば、出馬するのは個人の自由」と冷静だ。
 しかし、スハルト政権の重鎮で元大統領を最後に裏切ったギナンジャール国民協議会副議長(ゴルカル党副党首)は「総選挙で議席を争う上では、ゴルカル党に向けられた挑戦だ」と警戒する。
 イスラム政党の民族覚醒党を支持する国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)幹部のソラフディン・ワヒド氏は「現役の政治家が国民の支持を得られなければ、必然的に政党外に新たな人物を求めるか、旧体制の人物が再浮上することになる」と述べ、当然の動きと受け止める。
 しかし、仮に現職のメガワティ大統領と次期大統領の座を争うことになれば、「独立の父」スカルノ初代大統領と「開発の父」スハルト元大統領の代理戦争になる(インド・ポス紙)と冷やかし半分の期待を込めたマスコミ論調もある。
 トゥトゥット氏を大統領候補として推すことが決まったことについて、闘争民主党のプラモノ・アヌン副幹事長は、「メガワティ大統領はトゥトゥット氏の出馬を聞いてただ微笑むだけだった」と明らかにした。
 トゥトゥット氏の不正蓄財を含め、スハルト政権の旧悪を徹底解明せず、国軍や旧ゴルカル勢力などスハルト政権のほとんどの政治基盤を取り込んだつもりのメガワティ大統領は、トゥトゥット氏の動きに、無関心を装ったという。

総選挙 2004
総選挙参加の24党決まる 2大政党軸変わらず
「メガワティ人気は健在」−闘争民主党のチャフヨ国会会派代表
「総選挙で優位に立つ」−ゴルカル党のアグン中央執行部委員長
「守旧派の党ではない」−開発統一党のユヌス幹事長
「3党大連合」の可能性も−民族覚醒党のマーフッド副党首





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