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2003年2月8日 じゃかるた新聞掲載

ハイブリッド米を初出荷 近藤さんの「三輝」完成
 ジャカルタの主婦に評判

 ベテラン商社マンの近藤哲生さん(六三)と、三井化学の農業化学品事業部長の土屋猛さん(五一)が、インドネシア農業省の協力を得て開発したハイブリッド米「三輝」(みき)の生産が軌道に乗り、七日からブロックMのスーパー「パパイヤ」で初めて一般向けに発売された。「日本のコシヒカリに負けない味」と評判の、インドネシア政府公認の初の日本米は、主婦の間にかなりの人気で、五キロ入りの袋が、初日から売り切れになった。

 パパイヤの売り場で、近藤さんの妻、政江さんが電気釜で炊いたごはんをサービス。苦労して完成させたインドネシア産の日本米を説明するパンフレットを手渡した。
 お米に関心の高い邦人や華人の主婦たちが試食し、五キロ詰めの袋(限定数量のサービス価格五万三千二百ルピア)を、次々と買い求めた。近藤さんの友人の横手春美さんらも駆けつけ、初出荷を祝福した。
パパイヤの売り場で、ハイブリッド米「三輝」について話す近藤政江さん(左)と友人の横手さん
パパイヤの売り場で、ハイブリッド米「三輝」について話す近藤政江さん(左)と友人の横手さん
 近藤さんは三井物産を一九九八年に退職。ジャカルタに小さな商社コンドー・インターナショナルを設立した。
 三井化学の農学博士の土屋さんらと、四年間にわたり、ジャワ島各地でハイブリッド米を試験栽培。気象、土壌などの条件と生育の関係を分析。
 生産技術に改良を加え、一ヘクタール当たり六トンから十トンの収穫に漕ぎ着けた。
 ボゴールなどジャワ島の数カ所の水田で、年二回のペースで収穫。ジャカルタなど大都市の日本食を愛好する階層の主食として提供する。
 「三輝」の味のおいしさについて日本の権威ある調査機関(東洋精米の食味値調査=MIDO)によると、日本のコシヒカリの最高品種(新潟)が七八、福島産が七三、あきたこまちが七三であるのに対し「三輝」は七五で、日本に持ち込んでも食味ランキングのトップ・クラスとわかった。
 インドネシアに輸入されている日本米の価格は、五キロ当たりで、中国産あきたこまちが八万五千ルピア、茨城産コシヒカリが二十四万九千ルピア、同新潟産が二十六万九千ルピアなので、「三輝」の当面の価格は一級品の五分の一程度と安い。
 近藤さんは「ジャカルタの日本食店で、ご使用いただいた結果、大変、好評です。一年中、ジャワ島のどこかの田んぼで収穫し、その都度、精米して消費者に届けるので、いつでも新米を食べていただける。生産量に限りがあるので、当面は、インドネシア国内に限るが、将来は、シンガポールなど周辺国の市場にも輸出したい」と語っている。

■ハイブリッド米

 「とんびが鷹を生む」のことわざどおり、交配により優れた種子(ハイブリッド種子)が生まれる。この遺伝学の原理を稲作に応用したのがハイブリッド米。一つの田んぼの中に、花粉を持たないメスの稲と、花粉を提供するオスの稲を育て、風で交配させる。



2002年5月15日 じゃかるた新聞掲載

ハイブリッド米に成功 インドネシアで初めて
 日本開発の種子育てる 常に新鮮な日本米を生産

 日本の農学博士がインドネシアの技術者と協力し、インドネシアの水田で初のジャポニカ種のハイブリッド・ライスの作付けに成功した。日本のベテラン商社マンも、この実験を支援し、このほど農林省から販売許可を獲得した。おいしくて、たくさん穫れる日本生まれの米が、やがて、インドネシア全土に普及する可能性が大きく開けた。

 農学博士は三井化学の農業化学品事業部長の土屋猛さん(五一)。一九八六年からハイブリッド米に取り組んだ。
 ベテラン商社マンは、数年前まで三井物産で活躍した近藤哲生さん(六三)。退職してジャカルタに商社コンドー・インターナショナルを立ち上げた。
 ハイブリッド米の名前は「MIKI−1」と名付け、農業省から「種子製造販売許可」を取得した。
 最近、ジャカルタで開いた試食会で、すし、混ぜご飯、カレー、チャーハンとして振る舞われ、インドネシア人や駐在員の間で「うまい米だ」と評判だった。
 インドネシアでのハイブリッド米の開発は、農薬や肥料で農業にかかわってきた三井化学が、アジアの食糧問題の解決に取り組むとともに、世界の種子市場に挑戦しようという狙いが込められている。
水稲研究所主催の展示会で注目を浴びたMIKI-1の種子や苗
水稲研究所主催の展示会で注目を浴びたMIKI-1の種子や苗
 一九九六年、三井化学が売り出したハイブリッド米は、日本の農家の間で「高品質、多収穫」と評価され、消費者も「コシヒカリに劣らない」と評判になった。土屋さんはその種子を持って一九九九年、インドネシアを訪れた。
 最初は、タイ、ベトナム、フィリピンも調査したが「米を食べたい人が増え、輸入が急増している。この問題を解決したい」というインドネシア側の要請に応えたという。
 インドネシア農業省の種子局や水稲研究所に働きかけ、ジョクジャカルタ、チルボン、ボゴール、スカマンディなどの水田で評価試験を開始。土屋さん自身も、農民と一緒に田植えを行った。
 気象、土壌、農家の技術などの条件と生育の関係を解析し、生産技術に改良を加えた結果、一ヘクタール当たり六トンから十トンの収穫を実現した。
 土屋さんによると、インドネシアで七〇%を占めるインディカ米のIR64に比べ、収穫量は必ずしも良くはない。しかし、「MIKI−1」は品質、食味がよく、ジャポニカ米なので、インドネシア人にとても評判がいい。中間層が増え、おいしい米が食べたいという需要が強まっている。
 半世紀前、アジアの食糧不足を解決するため、フィリピンの国際水稲研究所が開発した多収穫品種はもちろん重要だが、豊作が続くと米の国際相場が下がり、農民の生産意欲をそぐ傾向がある。その点でも、付加価値の高い「MIKI−1」の役割は大きい。
 今後の課題はインドネシアで種子を量産すること。ハイブリッド米の種子は、日本では一キロ四千円以上するので、これをインドネシアでローコストで生産する必要がある。
 近藤さんは、「MIKI−1」を日本食に慣れた人をターゲットにし、日本食ブームを堪能できる中間層以上の消費者をセールスの対象にしたいという。
 近藤さんは「輸入米と違い産地直行なので、常に新鮮。比較的おいしく、リーズナブルな価格が魅力。インドネシアではカリフォルニア米が幅を利かせているが、それより、やや安い価格で提供できれば、競争力は十分ある」とみる。
 近藤さんは、売り方にも一工夫するという。高温、多湿のインドネシアでは、米の長期貯蔵は味に影響する。そこで、もみで保存し、消費者に精米して売り込むシステムを開発する。
 「インドネシアでの『MIKI−1』の生育期間は約百日。日本の百八十日に比べ、はるかに短い。だから、インドネシアのどこかに水があれば、新しい米を一年中、栽培できる。新鮮な米がいつでも消費者に届けることができる理想の米市場になるでしょう」と近藤さんは期待する。




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