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枕の上の葉の三少年


元気にしていたカンチル=マリオボロ通りのジョクジャカルタ特別州議会で
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第2回 セブンティーン

将来も、これまで通り

「大事なことは三食、食べられること」「有名になっても恥ずかしいだけ」

 列車がトンネルに差しかかる。枕を抱えて逃げるカンチルが列車の屋根によじ登り、ほっとして辺りを見渡す。その瞬間、スクリーンが暗転、少年の命があっけなく失われた…。映画で最も幼く見えたカンチルを探した。

 「カンチルに会いたいの? マジックマッシュルームを食べて、酔っぱらっているよ」とマリオボロ通りの裏で寝ていた少年が言って、カンチルを探しに行った。

 殺し屋に間違って狙われ、暗殺される少年を演じたスグンも同じ通りにいた。カンチルもスグンも今は十七歳になった。

 坊主頭の子供だったカンチルは、すっかり背が伸び、長髪の少年に成長していた。笑顔を見せているが無口だ。食事に誘うと、犯罪ニュースを報じる店のテレビにくぎ付けになった。一人仲間から離れ、テレビの前で食べている。

 「お金があったら、クチュブンを買い占めて、酔っぱらいたい。アハハーッ」。クチュブンは「シロバナヨウシュチョウセンアサガオ」と辞書にあり、幻覚作用のある植物だそうだ。

 一方、スグンは映画に登場した印象そのままで、優しげだ。日本語に興味を持ち、自分の名前をカタカナで書いて見せた。「映画の撮影で知った日本人に教えてもらったんだ」と言う。

 世界で映画が上映されているころ、二人はジャカルタのクリスティン・ハキムさんの家に引き取られ、一年ほど暮らしたが、再びマリオボロに戻ってきた。

 古都ジョクジャカルタの目抜き通りは、ベチャやオートバイがひしめく。駅が近いので、汽笛も聞こえる。夜になると名物のレセハン(ゴザを敷いて座って食べる屋台)が並び、路上には少年たちがたむろする。

 カンチルとスグンの二人のグループの縄張りは、マリオボロ通りの北側の地域だ。仕事は靴磨き。座って客を待つのではなく、朝から歩き回って汚れた靴を、つまり仕事を探す。

 仕事に飽きたらインターネット・カフェでコンピューターゲームを楽しむ。一時間三千五百ルピア。マジック・マッシュルームやクチュブン、ウォッカで酔っぱらうこともある。

 食事はツケがきく小さなワルンで済ます。靴磨きの収入は一日に一万から三万ルピア。食べるのには十分だという。

 路上の長いすやビルの階段の踊り場で寝る。政府が提供するシェルターで水浴をするが、泊まることはめったにない。

 シャイなスグンは伏し目がちに語った。「職業訓練学校に行きたいな。将来といってもビアサ(特別なことはない)。大事なことは三食、食べられることだ」。

 映画で強烈な印象を残したカンチルは、映画を見たという外国人から声をかけられることが多い。「今の自分は映画スターとは、かけ離れている。だから、有名になっても恥ずかしいだけ」と語った。


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