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2002年11月29日 じゃかるた新聞掲載

連載「ジャカルタで作る世界の料理」より (1)

レバラン祝う「餅」 クトゥパット
 ヤシの若葉は何とも美しい色をしている。濃い黄緑に縁取られ、中はほんのり緑がかった薄い黄。この葉を編んだ中に米を入れて蒸したものが、クトゥパット(ketupat)だ。断食明けの大祭(レバラン)に必ず食べる一品で、レバランの象徴でもある。レバランを一週間後に控え、クトゥパット作りに挑戦してみた。

クトゥパットとグレ(奥)
クトゥパットとグレ(奥)
 市場で、ヤシの若葉を一束買う。七、八十本ほど束ねたものが、三千ルピア。
 会社でクトゥパット作りを始めると、インドネシア人の同僚たちが、あっという間に編み上げていった。普通の四角形のほか、翼を広げた鳥、鶏、靴の形をしたもの、八角形のもの、丸い筒型、大きいもの、小さいもの…。
 基本の四角形を練習した。パダン出身のズルヘフィさん(三○)の懇切丁寧な指導で、二時間ほどかかって何とかマスター。コンピューターのキーを打つ以外の手作業は久しぶりで、楽しい。物作りとは楽しいものだ。すっかり夢中になってしまった。
 市場に、編み上がったものも売っているので、これを買い、家で米を詰めてクトゥパットを作るインドネシア人も多い。
 普通の米を使い、味付けもしないのが一般的だが、パダンではもち米を使うなど、地方によって異なるようだ。長時間ゆでて固くなるので、ナイフで食べやすい大きさに切り、グレ(カレー)やルンダンをかけて食べる。
 レバランの日は、家族でお祈りをした後、「過ちを許してください」とお互いにあいさつし、朝食にクトゥパットやグレなどのご馳走を食べる。一日目は近所や親せき宅をあいさつして回り、二日目は友人宅などを訪問して過ごす。
 日本のお正月で、除夜の鐘を聞いて一年の罪障を滅し、初詣に行き、家族でお雑煮を食べるのと似ている。
 レバランを祝う祭りは、昔は七日間続いた。その間、店は閉まり、来客で忙しいため、事前に作り置きできる保存食が必要だった。年中あるヤシの葉を使って、餅のような保存食として、クトゥパットを作り始めたようだ。
 クトゥパットはインドネシアだけでなく、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどにもある。イスラム教徒がレバランを祝う食事にするというのも同じだ。国境に関係なく広がるマレー・イスラム文化の一つと言えるかもしれない。

▼クトゥパットの編み方
クトゥパットの編み方。ヤシの葉の芯を取り、1枚の葉を2枚に分ける
(a)ヤシの葉の芯を取り、1枚の葉を2枚に分ける
2枚の葉を両手に3回巻く。左手は太い端を上にして、右手は下にして、逆方向に巻く
(b)2枚の葉を両手に3回巻く。左手は太い端を上にして、右手は下にして、逆方向に巻く
右手の1番左の葉を左手の葉に、上、下、上と重ねる
(c)右手の1番左の葉を左手の葉に、上、下、上と重ねる
重ねた部分の上部に、左手を持ち替える
(d)重ねた部分の上部に、左手を持ち替える
2本目は下、上、下、3本目は上、下、上に、右手の葉を左手の葉に通す
(e)2本目は下、上、下、3本目は上、下、上に、右手の葉を左手の葉に通す
右上に出ている長い葉のうち、後ろの葉を取り
(f)右上に出ている長い葉のうち、後ろの葉を取り


■チルボン風グレの材料(4−5人分)

 牛肉 500g
 ニンジン 1本
 ジャガ芋 2コ
 ココナツミルク 1コ分
 ココナツの果肉 100g
 植物油、塩 少々
 うまみ調味料 少々
 〈スパイスA〉
 ニンニク(bawang putih) 6片
 赤玉ネギ(bawang merah) 8片 
 ショウガ(jahe) 小さじ2
 ショウガの一種(laos/laoskuas) 小さじ2
 コリアンダー(ketumbar) 少々
 コショウ(merica)少々
 ナツメグ(pala) 小さじ1/2
 ウコン(kunyit)小さじ2
 タマリンド(asam)少々
 〈スパイスB〉
 レモングラス(sereh) 1本
 ローリエ(salam) 2枚


■作り方


 【クトゥパット】

 (1)米を洗い、30分−1時間、水に浸けておく。

 (2)ヤシの葉を編んだ中に米を半分ぐらい詰める。

 (3)鍋に入れて、持ち手の長い葉を1つにまとめて縛り、クトゥパットの倍の高さぐらいまで水を入れる。

 (4)なべにふたをして、中火で3−4時間蒸す。

 (5)水から引き上げて釘にかけるなどして吊るし、冷めたら、さいの目状に切って、皿に盛る。

 【グレ】

 (1)スパイスAのニンニク、赤玉ネギ、ショウガ、laosを細かく刻み、ほかのスパイスと混ぜ合わせ、フライパンでからいりした後、すり鉢でするかフードプロセッサーにかける。

 (2)牛肉、ニンジン、ジャガ芋は1.5センチ角に切る。

 (3)ココナツの果肉は、おろし金などで小さくし、フライパンで色がつくまでからいりする。

 (4)なべに油を引き、熱する。スパイスA、B、ココナツの果肉をいったものを加え、強めの火で、焦げ付かないよう注意してよくいためる。水を半カップほど加え、のばしながらいためる。

 (5)牛肉を入れ、色がつくまでいためてから、ココナツミルクを加えて肉が柔らかくなるまで1時間くらい煮る。ニンジン、ジャガ芋、塩、うまみ調味料を加えて、野菜が柔らかくなるまで1時間ほど煮る。

 (6)皿に盛り、刻んだ揚げニンニクとkucai(ニラの1種)を刻んで飾る。
左下まで2辺通す
(g)左下まで2辺通す
右下に出ている短い葉を
(h)右下に出ている短い葉を
下から上へ1回、右上まで1辺通す
(i)下から上へ1回、右上まで1辺通す
先に通した短い葉の後ろを長い葉で巻くようにして
(j)先に通した短い葉の後ろを長い葉で巻くようにして......
2辺通す。長い葉2本がそろう
(k)2辺通す。長い葉2本がそろう
長い葉2本の対角線上に短い葉2本がそろうように、短い葉を通す
(l)長い葉2本の対角線上に短い葉2本がそろうように、短い葉を通す
緩い所を引っ張り、形を整える
(m)緩い所を引っ張り、形を整える
市場でヤシの葉を売る人。あっという間に編んでくれた
市場でヤシの葉を売る人。あっという間に編んでくれた

連載「ジャカルタで作る世界の料理」より
  パダン−種々の香辛料が創るルンダン
  東ジャワ−名物の真っ黒なスープ
  マナド−バナナの葉に盛った粥
  ロンボク−島名の由来はトウガラシ





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