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2002年4月5日 じゃかるた新聞掲載

きょうジャカルタ入り 経団連ミッション
 今井団長ら大統領と会談 ASEANとの共栄模索

 世界貿易機関(WTO)への加盟を契機に中国の国際進出がより顕著になり、日本の東南アジア戦略の再構築が迫られている中、経団連の今井敬会長(新日本製鐵会長)ら七人の東南アジア・ミッションが五日午前、ジャカルタに到着する。一行は、先月二十八日からタイ、ベトナム、シンガポールを訪問したあと四番目の訪問国であるインドネシアを訪れるもので、メガワティ大統領をはじめ経済閣僚らと会談する。

 経団連はほぼ毎年、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国にミッションを派遣し、各国の経済、政治情勢を把握し、政府首脳との間に信頼関係を築いてきた。 
 インドネシアには、ハビビ政権時代の一九九八年十一月の訪問に続き、二〇〇〇年三月にも今井団長ら三十数人の大型ミッションが訪れ、アブドゥルラフマン大統領(当時)と会談している。
 一行は、政府首脳のほかに、インドネシア商工会議所代表ら経済人とも会談するほか、インドネシア政府へ投資環境改善や経済改革を提言するなど活発な活動を続けるジャパンクラブ(JJC)の幹部とも懇談する。
 経団連国際協力本部によると、最近の中国の製造業を中心とする急激な国際進出が、日本の産業の国際戦略や国際分業体制に、どのような影響を与えているか、重大な関心が高まっている。
 中国はASEANとの間に十年後をめどに、自由貿易協定(FTA)の締結を目指しており、日本も一月にASEANを訪問した小泉純一郎首相が、包括的経済連携構想を打ち上げた。
 今井会長らは、こうしたアジア情勢を踏まえ、日本、ASEAN、中国が共存共栄を図るためには、ASEANと日本との新たな協力体制を築く必要があると考えており、インドネシア側と、アジアにおける国際分業のあり方、国際競争力の強化策、包括的経済協力の具体化について意見を交換する。
 今井会長ら経団連首脳とメガワティ大統領の会談は、昨年九月の大統領訪日の際にも実現しており、半年ぶりの再会。この時の会談で経団連側は、インドネシアの投資環境の改善を強く求めており、その後もジャパンクラブが経済閣僚に具体策をまとめるよう働きかけてきた。
 このため、マクロ経済を発展させるための投資環境の整備、政府開発援助のあり方などについて、インドネシア側と意見交換を行う。
 また、ジャパンクラブとの懇談では、日本大使館の堂道秀明・臨時代理大使の報告を受け、日系企業の幹部らと情報を交換する。
 アブドゥルラフマン前大統領との二年前の会談で今井会長は、「一年半前(ハビビ政権当時)に訪問した時、日本もインドネシアも状況が悪かった。今は新政権が誕生して落ち着き、経済も回復しつつある」と、当時の政権を高く評価しており、政権発足後、八カ月を経過したメガワティ政権をどう見るか注目されている。

■経団連ミッションの顔ぶれ

 団長、今井敬・経団連会長(新日本製鐵会長)▽香西昭夫・同副会長(住友化学工業会長)▽上島重二・同副会長、経団連日本インドネシア経済委員長(三井物産会長)▽高原慶一朗・経団連評議員会副議長(ユニ・チャーム会長)▽安居祥策・経団連・日タイ貿易経済委員長(帝人会長)▽和田龍幸・経団連事務総長▽藤原勝博・経団連常務理事

■タイ、ベトナム、シンガポールへの訪問者

 荒木浩・同副会長(東京電力会長)▽森下洋一・同副会長(松下電器産業会長)▽宮原賢次・経団連日本ベトナム経済委員長(住友商事会長)


2002年4月6日 じゃかるた新聞掲載

ハムザ副大統領と会談 経団連ミッション
 投資環境の整備を要望

 タイ、ベトナム、シンガポールを訪問した経団連の今井敬会長(新日本製鐵会長)ら七人の東南アジア・ミッションは、四日午前、ジャカルタ入りし、午後一時からハムザ・ハズ副大統領、同三時からラクサマナ・スカルディ国有企業担当国務相、テオ・トゥミオン投資調整庁長官と会談。同五時からインドネシア商工会議所のバクリー会頭と会談した。経済好転の兆しが見え始めたインドネシア経済の現状を説明したラクサマナ国務相らに対し、今井団長は「経済の活性化を維持するためには、外国投資の一層の拡大が必要だと思う」と述べ、インドネシア政府が投資環境整備を急ぐよう改めて要望。テオ長官が、外国投資法の草案に盛り込んだ前向きの方針を説明するなど、双方の間で活発なやりとりがあった。メガワティ大統領との会談は六日午前に予定されている。

ラクサマナ国務相(左)の話に耳を傾ける(右から)経団連の今井会長、上島氏、安居氏
ラクサマナ国務相(左)の話に耳を傾ける(右から)経団連の今井会長、上島氏、安居氏
 ガトットスブロト通りの投資調整庁で行われたラクサマナ国務相とテオ長官との会談には、今井団長のほか経団連副会長の香西昭夫・住友化学工業会長、上島重二・三井物産会長(経団連日本インドネシア経済委員長)、高原慶一朗・ユニ・チャーム会長(経団連評議員会副議長)、安居祥策・帝人会長(日タイ貿易経済委員長)、和田龍幸事務総長、藤原勝博・経団連常務理事、ジャカルタから日本大使館の堂道秀明臨時代理大使、渡辺壮嘉ジャパンクラブ(JJC)理事長、加藤裕之ジェトロ所長らが出席した。
 ラクサマナ国務相は、金融再建、補助金廃止、民営化など「痛みを伴う改革」を進めた結果、通貨、インフレ率、株価、成長率など経済指標が徐々に上向き、「国際社会の信頼回復にこぎ着けた」と強調。残る重要課題は、民間債務軽減と投資拡大であるとして、主要債権国会議(パリクラブ)での日本の支援を求めた。
 ラクサマナ国務相は「政府の決断で日本の四大プロジェクトの債権問題を解決させた。その決断は、インドネシア政府が、いかに日本との協力関係を重視しているかの表れだ」と語った。
 新投資法案をまとめ、政府に提出したばかりのテオ投資調整庁長官は、外国と国内の投資を平等に扱い、市場開放の精神に沿った外資導入策を政府が検討中であり、「投資認可」の役所だった投資調整庁を「投資家のニーズ」を大切にする投資誘致の機関に衣替えし、労使紛争や土地紛争を処理するため警察、裁判所、情報機関も参加するタスクフォースを設立すると説明。「今月八日には投資促進について、ジャパンクラブと会合を持つ」と述べた。
 これらの発言に対し、今井団長は、投資環境の整備に向け一層の努力を求める一方、ジャパンクラブが、メガワティ大統領に提出した十項目の経済改革提言書を尊重し、改革を実行に移すよう求めた。
 ジャパンクラブは昨年九月のメガワティ大統領の訪日の際、インドネシアの事業環境の改善と外国投資促進を求める十項目の提言書を提出。投資促進と裾野産業振興、関税、課税、労働問題の四つの課題について小委員会を設置。インドネシア側のカウンターパートと協議を続けている。
 経団連ミッションは六日、メガワティ大統領らと会談した後、同日夜、ジャカルタを発ち、帰国する。


2002年4月8日 じゃかるた新聞掲載

「外資誘致の刺激策を」 「日イで競争力を強化」
 「中国進出はチャンス」 経団連が大統領に提案

 世界貿易機関(WTO)に加盟した中国の国際社会進出に、東南アジア各国はどう対応しようとしているのか−を主なテーマに、タイ、ベトナム、シンガポールを訪問、五日にインドネシア入りした経団連の今井敬会長(新日本製鐵会長)ら七人の東南アジア・ミッションは六日、メガワティ大統領と会談した。中国、北朝鮮、韓国、インドの四カ国訪問を終えたばかりのメガワティ大統領は、経済再建を最優先課題として取り組む姿勢を強調し、「市場としての潜在力を考えた場合、社会が十分な能力を持たなくては、潜在力は潜在力で終わってしまう」と述べ、先進国の経済支援に頼るだけでは、経済自立は難しいとの哲学を披露した。

記者会見に臨む(右から)今井会長、上島日イ経済委委員長、和田龍幸事務総長
記者会見に臨む(右から)今井会長、上島日イ経済委委員長、和田龍幸事務総長
 記者会見で今井会長は、四国訪問の印象として、(1)各国とも中国のWTO加盟を歓迎している(2)中国の進出は拒否できない(3)中国の台頭は東南アジア諸国にとって挑戦でありチャンスである−の三点を指摘した。
 今井会長によると、チャンスとは中国が巨大な市場であること。挑戦とは、アジア各国が競争力の強化を迫られていること。そのために、日本が資本、技術、人材を提供する役割を担っており、そのためにこそ外資誘致の環境整備を急ぐ必要がある、として、外資誘致に積極的に取り組むよう要望した。
 また、今井会長は、中国の台頭によって東アジアのパワー・バランスが崩れないようにするため、ASEANの結束を再び強化する必要がある。中でも最大の国であるインドネシアの政治安定が重要である−と述べた。
 メガワティ大統領との会談で今井会長は、電力や石油化学の四大プロジェクトの問題を軌道に乗せ、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)の投資環境に関する提言に「インドネシア政府が素早い対応をしてくれた」とメガワティ政権の改革の進展を評価、投資誘致のインセンティブを充実するよう求めた。
 これに対し、大統領は「今世紀の経済は以前のような形では立ち行かなくなっている。より高いレベルの経済に達した国が、自国の利益を最大限に拡大しようとするだけでは、地域の安定と繁栄は実現できない」と述べ、長期的な互恵精神に則った関係樹立を求めた。主要債権国会議を控え、日本側に柔軟姿勢を呼びかけたものとみられる。
 インドネシアの経済情勢について、経団連日本インドネシア経済委員会委員長の上島重二・三井物産会長は「昨年九月のメガワティ大統領訪日時と比較し、国内の政治、社会安定や投資環境整備の点で、大きく改善されつつある」と述べた。
 中国や韓国との競争に日本がどう対処していくのか、との質問に対し、「中国や韓国の製品に競争力があるのは事実だが、インドネシアも日本も、アジアおよび世界の中で協力の枠組みを広げ、国際競争力を強化していく姿勢が必要だ。日本とアジアが共生しようというのは、そうした考え方が背景にある」と述べた。
 日本企業の中国進出に懸念するインドネシア記者の質問に答え、今井会長は、「中国への日本の投資が伸びているというが、ASEANへの投資はその三倍もある。日本の工場が中国に建設されてはいるが、過去四十年間の蓄積があるASEANに対しては、輸出基地としての拡大投資を行っている」と説明、日本企業にとってASEANは依然として重要な戦略拠点であることを強調した。
 今井会長は今回のミッションを総括し「タイ、ベトナム、インドネシアは、各国の政府と日本の商工会議所が緊密な関係を築き、問題があった際の処理のスピードが早くなったのが、一番評価すべき点。シンガポールはIT(情報技術)集中化からの脱却を図り、構造改革を実施しようとしているが、まだ具体的な案は出ていない」と述べた。

 経団連首脳とメガワティ大統領の会談要旨は次の通り。

 今井会長 四大プロジェクト問題やJJC提言についての、素早いアクションに感謝している。
 今回、訪問した国々は、中国の台頭は避けられない、挑戦だがチャンスでもあると受け止めている。中国進出による競争に勝つため、日本をはじめとする外国の資本、技術、人材の受け入れに積極的な姿勢を示している。潜在力のあるインドネシアも、外資に対するインセンティブ導入をお願いしたい。
 メガワティ大統領 私の外遊はこれで三度目。今回の外遊で、今世紀の経済は、以前の形では立ち行かなくなっているとの印象を得た。より高いレベルの経済に達している国が、自国の利益を最大限に拡大しようとするだけでは駄目になっている。市場としての潜在力も重要だが、社会が充分な能力を持たないと、潜在力は潜在力で終わる。
 前の二人の日本大使にも伝えたが、インドネシアの大きな潜在力が、十分評価されていない面もある。いま行うべきは、長期的互恵精神に基づく協力関係の構築である。日本はインドネシアの長年の友人。これまでの良好な日本とインドネシアの関係をより緊密化することを期待したい。私は実質二年半と、通常の半分の任期で指導者を引き受けた。二〇〇四年には、他国の支援を受けなくても良い状態になるようにしたい。




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