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2003年2月28日 じゃかるた新聞掲載

じゃらん・ジャクサ25時(上)

バックパッカー通過点 何もかも忘れて笑う
 イタリア、オーストラリア、ドイツ、フィンランド、アメリカ、イングランド、日本。バックパッカーたちが残していった世界各国の本が並ぶ。かなりいたみ、白かったはずのページはこげ茶色だ。
 小さな古本屋に入り、そんな本に囲まれていると、世界中を旅するバックパッカーたちの足跡、彼らの思いに心が動く。「何人の人がここを訪れ、どんな感情を抱いたのだろう」と。
 ジャカルタの近代的なビルが立ち並ぶタムリン通りからワヒド・ハシム通りを経て二つ目の角を左折すると、そこが南北に約一キロのジャクサ通り(Jl.Jaksa)。安宿、カフェ、旅行代理店などが軒を連ね、世界中のバックパッカーたちや、地方からのインドネシアの旅行者も訪れる。
 西洋人、アフリカ人、アラブ人、アジア人と、見ているだけでも飽きない顔ぶれだ。通りを歩くと「ハロー」と誘惑の目線。「ハッパあるよ」と誘惑の声。愉快でほのかに危険が漂うジャクサ通り。
 ジャクサ通りは夜が面白い。何するわけでもなく、道端にたむろする人、寝てる人、カフェでビンタンを飲みながら談笑する旅行者たち。
大勢の客で賑わう「バーファンズ・クラブ」
大勢の客で賑わう「バーファンズ・クラブ」
 通りに面するカフェやバーは約十数店。最も客が多く賑やかなのが、「メモリーズ・カフェ」。
 一階がカフェ、二階は貸部屋になっている。店のカウンターにいるハリーさんは、最初は無愛想に見えるが「ハロー」とあいさつしてくれるナイスガイだ。
 この店は、週末の午後九時ぐらいからバンドの生演奏があり、その時間帯には、通りにも人垣ができるほどの賑わいを見せる。
 インドネシアで流行している曲や世界的に有名な曲、ビートルズ、クィーンなどからオールディーズ、たまにサブライムなんかも演奏してくれる。
 ビンタンを飲み、いい気分になった若者たちが、そのリズムに体を揺らす。何の曲だろうとやってきた路上生活者も店の外から、しばし、聞き惚れている。
 アチェ、イリアンジャヤなどの紛争地から来た人、テロ事件を警戒する米国人、ビジネスにありついたアフリカ人も、のんきな日本人もいる。
 ムスリムも、カトリックも、売春婦も関係なしに自由に音楽を聴いて、乾杯となる。何もかも忘れて皆、笑っている。店の周辺にいる女性は、出会ってすぐに「ドゥー・ユー・ラヴ・ミー?」となり、酔って踊りだすと、「アイム・オカマー」とすり寄ってくる男性あり。
 英語、インドネシア語ができなくても大丈夫。適当な会話で、笑って乾杯できたら、それはもう素敵な思い出。あなたもここに足を運んだら、この店の名の通り、素敵な思い出ができるかも。

つづく


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