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2003年1月24日 じゃかるた新聞掲載

「政府・国会は感覚まひ」 「国民呼応で政権打倒も」
 デモ動員の黒幕 ハリマン・シレガル氏と会見

 年明けとともに口火を切った学生デモは、公共料金値上げ反対から政権打倒を叫ぶまでエスカレートした。デモを動員している黒幕の一人とされるのが、一九七四年の反日・反政府暴動「マラリ事件」で学生デモを率いたハリマン・シレガル氏(五二)。国家情報庁が「デモの黒幕」と名指しした、旧体制の大物政治家のウィラント元国軍司令官、フアド・バワジル元蔵相、アディ・サソノ元協同組合相の三人と緊密な関係を持つ。今月十五日には、反政府運動を展開する政治家や活動家を集めてマラリ事件の記念行事を開催し、デモを盛り上げた。シレガル氏に、デモの動向などについて聞いた。

現政権を批判するハリマン氏
現政権を批判するハリマン氏
 −政府や国会の現状をどう見るか。
 メガワティ大統領は危機感を持っていない。国会は大政党が牛耳り、政府の中に組み込まれ、国民は疎外されている。デモはこのような状況を打破するため、国会ではなく、大統領官邸へ向かい、窮状を直訴している。
 −要求は正副大統領の解任へとエスカレートしている。
 国民感情の問題だ。公共料金を上げるとか下げるとかは表面的なこと。問題は、KKN(汚職、癒着、縁故主義)がまん延し、汚職者への罰則もない現状に対する不満が高まっていることだ。
 −解任は可能なのか。
 国民が支持派と反対派に明確に分かれ、国会に圧力をかけて罷免手続きを進めさせれば良かったグス・ドゥル(アブドゥルラフマン前大統領)の時とは違う。国会は保守化し、犯罪者の議長(不正事件で二審まで実刑判決が下っているアクバル・タンジュン氏)さえ解任できない状態だ。
 通常の手続きでは、解任はできない。最高幹部会(プレシディウム)の設置など、さまざまなコンセプトを議論している。
 −アミン・ライス氏、エロス・ジャロット氏ら、ほかの政治家との連携は。
 アミン氏か……(眉間にしわを寄せながら)明快な見解を持っている政治家ではある。エロス氏とも議論はしている。私は、学生運動を信じている。感覚がまひした政府・国会に対し、学生やNGOなどが中心となって、反発していかなければならない。
 −選挙まで約一年半だが、デモは継続するのか。
 デモが終わることはない。国民がデモ隊の訴えにどう呼応するかによるが、支持者が増え、軍が鎮圧しなければ、現政権打倒につながる。国会では選挙関連法案の審議でもめており、新たな希望を生み出すような選挙を実施できるかは疑問だ。

 ハリマン・シレガル氏 1950年、北スマトラ州パダン・シドゥンプアン生まれ。インドネシア大医学部在学中、学生運動に参加。1974年の「マラリ事件」でデモを率い、政府転覆罪で投獄される。出所後、中央ジャカルタ・チキニで、クリニックを開業。ハビビ元大統領の弟、ファニー氏と親しく、ハビビ政権下で、ウィラント元国軍司令官やアディ・サソノ元協同組合相との関係を強めた。アブドゥルラフマン政権当時、ウィラント氏らと「クーデター」を画策しているとうわさされたこともある。
 昨年末の国営通信企業インドサット社の株売却で、被害を被った同社株主のウィラント氏やフアド・バワジル元蔵相らから、デモ動員の要請を受けたとの見方もある。
 インタビュー中、携帯電話にデモ隊のリーダーから頻繁に報告が入り、「前進あるのみ!何を恐れている」とはっぱをかける姿が印象的だった。



2003年1月16日 じゃかるた新聞掲載

活動家や政治家が集結 マラリ事件29周年
 メガ政権を厳しく非難

 一九七四年一月十五日、日本の田中角栄首相がインドネシアを訪問した際に起きた反日・反政府暴動「マラリ事件」の二十九周年に当たる十五日、タマン・イスマイル・マルズキ(TIM)で、当時の活動家や政治家約千人が集まり、メガワティ政権に対する批判演説を行った。最近のデモを動員しているとみられる勢力が集結したものとして注目される。

公共料金値上げ反対デモで、大統領官邸前に集結したデモ隊
公共料金値上げ反対デモで、大統領官邸前に集結したデモ隊
大統領の肖像写真を踏みにじる学生
大統領の肖像写真を踏みにじる学生
 学生活動家としてマラリ事件当時のデモを率いたハリマン・シレガル氏は、「現状を放置した場合、状況はさらに悪化する。国民を無視した政策に対し、厳しく批判していかなければならない」と述べ、メガワティ政権への抗議運動を呼びかけた。
 これに呼応し、熱気に包まれた会場の活動家からは「メガワティ大統領とハムザ副大統領は、すぐに辞任しろ」との叫び声が上がった。
 同行事に出席したのは、ウィラント元国軍司令官やヌグロホ・ジャユスマン元ジャカルタ警視総監のほか、アミン・ライス国民協議会議長の側近のフアド・バワジール元蔵相、正義党のヒダヤット・ヌルワヒッド党首、月星党幹部のアブドゥル・カディル・ザエラニ氏らイスラム系政党の政治家、ムハマディアのシャフィイ・マアリフ議長、著名弁護士のアドナン・ブユン・ナスティオン氏、人権活動家のディタ・インダ・サリ氏、詩人のレンドラ氏ら。
 シャフィイ議長は「政府は鈍感になり、良心を喪失している。国民の困難な状態を見極め、公共料金値上げは延期するべきだ。国民は混乱を起こさず、変革を要求していかなければならない」と呼びかけた。

■メガワティ降ろしデモ 学生評議会ら5000人参加

 公共料金値上げに反対するインドネシア学生評議会(BEM)、イスラム学生連盟(HMI)、インドネシア青年国家委員会(KNPI)などの学生ら約五千人は十五日、大統領官邸前に集まり、メガワティ政権に値上げを撤回するよう求めるデモを行った。今月二日に値上げが実施されて以降、デモは二週間続けて実施されている。
 デモ隊は「政府がわれわれの要求を無視し続ける限り、デモは終わらない」などと気勢を上げ、メガワティ大統領の肖像写真を踏み付けるなどの抗議活動を行った。
 官邸前のほか市内数カ所で、タイヤを燃やしての抗議が行われたが、警察がすぐに消し止めた。
 中央スラウェシ州パルでは同日、メガワティ大統領の辞任を求めるデモ隊数百人が、市内にある闘争民主党事務所に押しかけ、同党自警団(サトガス)と衝突。すぐに警察が駆け付けたが、十人以上が負傷、二十人が逮捕された。
 一方、国会前では、メガワティ大統領支持派の団体約百人も集結。「値上げはメガワティ大統領の独断による決定ではなく、国会の審議で決められたもの」として大統領を擁護、国会の責任を追及した。
 このほか、スラバヤ、ソロ、パレンバンなどの各都市でも、学生を中心とした抗議活動が行われた。




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