次期大統領の有力候補であるアミン・ライス国民協議会議長(国民信託党党首)は十八日、じゃかるた新聞との会見に応じ、二〇〇四年に実施される初の大統領直接選挙は、自分に有利に働くとの見方を示した。アミン議長は、再選を狙うメガワティ大統領(闘争民主党党首)の資金力に警戒感を示すとともに、イスラム政党だけでなく、ナショナリスト勢力との連携も視野に入れ、執念の大統領ポスト獲得を狙っていることを明らかにした。
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アミン・ライス 国民協議会議長
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アミン議長は、初の大統領直接選挙について「大統領の選出が国民に委ねられれば、私の政治的なイメージや評判が直接、票に反映されるので、私が勝つチャンスは広がる」と語った。
国民信託党は、前回の総選挙で、予想を下回る第五党(得票率約七%)に終わったが、二〇〇四年の総選挙では、第二党もしくは第三党に食い込むことに自信を見せた。
研究機関の分析では、次期大統領の有力候補は、メガワティ大統領とアミン議長の二人に絞られるとの見方が有力。メガワティ氏について「夫のタウフィック・キマス氏の資金力が彼女の強みだ」と語り、タウフィック氏の資金力がアミン陣営の障害であると認めた。
また、タウフィック氏が、公金横領事件で有罪判決を受けたアクバル・タンジュン国会議長(ゴルカル党党首)の職務継続を支持しているのは「ゴルカル党に弱みを握られているためだろう」と述べた。
次期総選挙と大統領選挙に向けた戦略として、出身母体である「ムハマディア」を基盤に「ナショナリスト勢力との連携やナフダトゥール・ウラマ(NU)の指導者から支持を取り付けることも考えている。私に欠けている部分を補える副大統領候補とコンビを組むことが重要となる」と述べた。NUは一時、敵対関係にあったアブドゥルラフマン前大統領の母体であるインドネシア最大のイスラム大衆団体。ムハマディアは、都市部の知識層を基盤とする第二の団体。
アミン議長は、大統領選挙でイスラム政党の結集を狙っているとの見方に対し、「国民は宗教色の強い政党を支持することをためらう傾向がある」と断言。
さらに「イスラム政党は、常に党内に摩擦を抱えている。開発統一党も月星党も路線をめぐり、分裂している。近い将来、イスラム政党の連合が作られるという考えは幻想にすぎない」と語った。
また、対イラク攻撃を検討する米国政府に不信感を示し、メガワティ政権に米国からの圧力を警戒するよう要求、「米国は自分の問題は自分で処理すべきであり、インドネシアを巻き込むべきではない」と述べた。
主な一問一答は次の通り。
─前回の総選挙の敗因は。 アミン議長 イスラム色を前面に打ち出さなかったためとの見方があるが、そうは思っていない。上位二党の闘争民主党とゴルカル党はどちらも世俗的な政党。イスラム政党は集票力に欠ける。
─国民信託党がイスラム色を強めているとの見方があるが。 よりイスラムのイデオロギーに沿った政党にしようとする党幹部がいるのは事実だ。しかし、反対意見もある。狭い視野で、イスラムを政党のシンボルにしようとするグループは退けられるだろう。
─大統領候補として、あなたに欠けているものは。 私には、近代イスラムの指導者とか、学者・知識人といったイメージがある。政治学者であるため、経済を理解していないとか。また、私の影響力はジャワやスマトラに限られており、東部インドネシアでは人気がない。このため、副大統領候補とのバランスに注意を払っている。
─ユスリル法相はどうか。 前回選挙でユスリル氏の党の得票率は二%。彼と組んでも、勝てないだろう。
─ナショナリストの候補と組むことは。 良い考えだ。友人も、メガワティ氏や(妹の)ラフマワティ氏のような、ナショナリストの指導者と組むことを提案している。ゴルカル党は、イメージが悪すぎる。
─ライバルはメガワティ氏か。 彼女の一番の強みは、夫のタウフィック・キマス氏が持つ豊富な資金力。そして、中部・東部ジャワに、多数の狂信的な支持者がいる。ソロやジョクジャカルタに行けば、「死んでも、メガについていく」という横断幕がかかっている。メガワティ氏は国を救う女王だと盲目的に思い込んでいる。ジャワ島はメガワティ氏の大票田であり、国内で最も人口密度が高い。
さらに、米国政府は独自の計算から、メガワティ氏の再選を支持している。米国は、イスラム世界に非常に懐疑的になっており、すべてのイスラム国はテロを支持していると思い込んでいる。これは非常にばかげている。
─闘争民主党はゴルカル党との連携を強めているが。 タウフィック氏が、アクバル氏に寛容なのは、ゴルカル党がタウフィック氏の不正に関する文書を握っているためだとみている。ゴルカル党の反撃を恐れているのだろう。
─イスラム政党指導者と会合を重ねている目的は。 会合を持って何がおかしい。密談したわけではない。「イスラム勢力が何かを企んでいる」というステレオタイプな見方にはうんざりしている。