アロール県は、西のパンタール島と東側のアロール島で構成され、この二つの島の間に小さな島々が散在する。この海峡の一帯はサンゴ礁が多く、熱帯魚が豊富に生息する。
県都カラバイから西へモーターボートで一時間。フランスの青年が最近、コテージを開いた小島ケパ島の沖にボートを止めた。
透き通った水の中を活発に動き回る大小の魚群や色とりどりのサンゴ。一般にはまだ知られていないが、世界のダイビングマニアにとって、アロール島は憧れの地だ。
オーストラリアから、ダイビングクルーズの船が頻繁に訪れる。この海の美しさに魅せられた外国人の数が増え、ケパ島に若者向けの宿泊施設が開かれるほどになった。
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取れたての魚を見せるプラ島の漁師
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この海域は暖流と寒流が交わり、潮の流れが速い。無数の渦巻きが発生する地点でもある。ダイビングポイントの選択には、注意が必要だが、ひとたび海に潜ってしまえば、別世界が広がる。
ケパ島にほど近いところに、巨石文化の面影を思わせるような石の階段がそびえ立つプラ島がある。一抱えもある石を、海岸から山の手に向かってぎっしり積み上げ、漁民たちの生活道になっている。
海の男たちは、流れの速い海に飛び込んで、手製の水中銃で捕らえた赤、青、黄色など原色に彩られた熱帯魚を運んでくる。屈強な肉体に浅黒い肌の男たちは、口数は少ないながらも、ホスピタリティーに溢れている。たったいま、水揚げされたばかりの魚を勧めてくれた。
極めつけは、島名産の地酒「ソピ」。その場でさばいた新鮮な魚を、シュロから造られた「ソピ」と一緒に口の中に放り込むと、豊富な海の幸と広大な自然を実感する。
温泉があるというので、アロール島の中心部から東へ車で二時間のトゥティ村を訪ねた。大きな岩がゴロゴロと横たわり、豊かな緑で覆われた山々とは、違った様相を見せている。
急斜面を下り、湯気が立ち上がる川岸に着くと、激しく蒸気が吹き上げる岩場があった。手を触れると、やけどしそうなほどの熱湯だ。ボコボコと音をたててお湯が噴き出しているのがわかる。
地元マピ族のムサ・ラウレさん(四二)は「年に二回ほど、温泉の蒸気が大音響をたてて吹き上げ、山の上からでも聞こえるほどです」と語った。温泉は肌の病気に効くと言い伝えられている。
アロール県の観光局は、大自然そのままの姿を残すサンゴ礁の海と、この温泉を利用した施設を造り、島の観光の目玉にしたいと考えている。